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前回(前編)から引き続き、傳來(でんらい)工房さんの会社見学会の様子をレポートしていきます。
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今回の会社見学会でご教授頂いたこと、皆様と共有出来たらいいなと。
また私の復習も兼ねて、当ブログでまとめてみたいと思っております。
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環境整備とは・・・
「礼儀」「規律」「清潔」「整頓」「安全」「衛生」をお客様視点徹底的に磨き上げる活動。
「お客様視点(妥協を許さない客観的視点)」が大切だそうです。
その6つの項目はしっかりと明文化されていましたので、いくつかご紹介します。

1.礼儀
(1)挨拶は、明るく、元気にはっきり言います。
(2)お客様には笑顔で接し、『感謝』の気持ちを込めて挨拶します。
(3)必ず相手より先に挨拶します。

2.規律
(1)決められたことを必ず守ります。
(2)指示・指令は必ず文章又は電子メールで行い期日を明示します。
(3)結果は必ず期日に報告します。
(4)時間を守ります。
(5)資料、提出物は必ずチェックし、ミスを無くします。

3.清潔
(1)必要な清掃用具は揃え、必ず決まった場所に置きます。
(2)社内をピカピカに磨き込みます。
(3)汚い、不潔な場所を無くします。

・・・など。

ご覧の通り、一口に“環境整備”と言っても、身の回りの環境を改善してゆくだけではありません。
自分自身の社会人としての礼儀(身なり、立ち振る舞いなど)や規律(態度など)にまで言及されていました。
会社内全ての事柄を磨き上げていく活動です。

そう言うと、なにか精神論的な堅苦しいイメージもありますが。
しかし、こちらにはその様な深刻さはありませんでした。
社員の皆様でサークル活動を楽しんでいるがごとく環境整備に取り組んでいるようにも思えたほど。

そこも傳來工房さんの凄いところです。
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【なぜ環境整備にこだわるのか?】
掃除や整理整頓などは軽く見られがちです。
「そんなのは我々の仕事じゃない」と思う方も少なからずいらっしゃると思います。
「我々は掃除をするために会社に来てるんじゃない!」とか、「掃除はパートのおばちゃんにやってもらえば良い!」などと言う人もいるでしょう。

違うんです、自分達の手を使って実践することが肝心。
色々と思うところがあるかもしれませんが・・・
とりあえず“言い訳なし”でやってみることが大切だそうです。

環境整備とは・・・仕事の原点である。
これを磨き込むことによって、社員の人格も、製品も、サービスもピカピカに輝いてくる。


これまでの経験からくる自信に満ちた表情で橋本社長はおっしゃいます。
「全ては環境整備ありきなのです」と。
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【環境整備に言い訳なし!!】
道具などの管理方法を“皆で決めて共有”し、そのルールをしっかりと守る。
清掃方法、行うタイミングも然り。

とは言え、普通はキチンと実践することは難しいものです。
「ただでさえ普段の業務が忙しいのに・・・」と思いますよね。
ましてや、「業務時間外で掃除をしなさい」と言われても無理があります。

そう、出来ない(やらない)理由はいくらでも探せてしまう。

なので、環境整備活動を“業務の一環”として業務時間内でしっかりとやって頂く。
会社の方針として、毎日決まった時間をその活動に当てることが重要だと言います。
また、自らの環境整備を評価・改善を行なったり、ルール作りを行う時間なども業務の一環として定期的にしっかりと設けます。

“環境整備に取り組みやすい環境も整備”していく。
無理なく取り組める仕組みがあるおかげで、社員の皆様は楽しみながら続けられているのだと思いました。

なぜ貴重な業務時間の一部を割いてまで行うのか?
一言で言うなれば・・・“それに見合うだけの十分な効果があるから”です。
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【考え方を社員全員でキチンと共有する】
人はどうしても理由を求めてしまう生き物です。
ですから、環境整備についての考え方を皆で共有して取り組むことが必要だと言います。
だた闇雲に「やりなさい」と言われるより、その目的と理念を知ることでモチベーションが上がります。
特に若い世代は理論的・合理的に説明しないとついてこないもの。
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なぜ環境整備に取り組むのか?
それは“物心両面の豊かさ”を手に入れるため。

それは小手先のスキルでサクッと業績を上げるようなイメージではありません。
時間の掛かることかもしれませんが、それが真の意味で“皆様に喜んで頂ける仕事”が提供出来る様になるための最善の方法だと言います。

環境整備に注力することにより会社全体の“基礎力”が上がり、ひいてはそれは全て自分達にも返ってくるようです。
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傳來工房さんが環境整備に出会ったのは約27年前。
現社長の橋本和良氏が代表取締役社長に就任した、平成7年(1995年)当時に遡ります。
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画像引用:トウシル 楽天証券
当時はバブル経済が崩壊し、大不況の真っ只中。
ご多分に漏れず、傳來工房さんも徐々に業績が悪化していったそうです。

このままでは会社の存続が危うい・・・
社長に就任して間もない橋本氏の試行錯誤が続きました。

経営コンサルに助言を求めたり、業績を上げている会社に見学に行ったり。
その様な中でたどり着いたの“5S活動”。
そう、“5S活動”というのは聞いたことがあるかもしれませんね。
5Sとは、“整理”、“整頓”、“清掃”、“清潔”、“しつけ”の頭文字を取ったもの。
一般的には3S(整理、整頓、清掃)とも言われます。
製造業や病院などで取り組まれている職場環境を整える(環境整備)活動です。

「これだ!!ウチを立て直すにはこれしかない」。
橋本社長は直感的にそう確信したと言います。
それが傳來工房さん流の“環境整備”の始まりです。

当時の会社内の様子は現在とはかなり違ったものだったそう。
皆思い思いの方法で道具の管理をして、気が向いたら清掃を行っていました。
使用時に所在が分からない道具、しかもそれぞれ個人用のもので重複してしまう。
雑然とした工場内、来客があっても挨拶1つもしようとしない鋳物職人達。
持てる技術は超一流・・・けれど昔ながらの職人は人見知りでシャイな人が多いものです。

その様な中で“整理整頓”、“清掃”を推し進めようとしましたが・・・
昔からの慣習もあり、社員達はなかなか実践してくれない。
特に古くから居る社員はそれが面白くなかったようで、抵抗勢力になる始末。

「どうしたものか・・・」。
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そして、環境整備に成功していたとある会社さんの社長にアドバイスを求めた時のことです。
「あなたはトイレ掃除をやっていますか?」と尋ねられたそうです。

「そう言えば・・・やったことがなかった」。

「社長自ら率先してやらなければ、社員はついてきませんよ」。
と、言われ愕然としたそうです。

その帰りの足で掃除道具一式を買い漁り、早速次の朝から実践。
しばらくは孤軍奮闘、最初は社員達からは訝しがられながらも続けました。
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掃除をやり始めた頃の会社のトイレは・・・とても汚くて臭い。
そう聞いて私は公衆トイレを想像してしまいました
なので最初は嗚咽を我慢しながら、ゴム手袋にマスク、ゴム長靴に柄の長いブラシで武装して作業することになります。

「あぁ、嫌だ・・・」。

しかし、ここで諦めたら会社の存続はない。
言い訳なしでただやってみるしかない。
そして誰よりも早く出社し、毎朝のルーティーンとしてやり続けたそうです。

徐々に綺麗になっていくトイレ。
社長自ら熱心に掃除する姿を見て、社員達の間から徐々に賛同者も増えていきます。
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「そうか・・・磨いているのは自分自身の“心”だったのか」。

するとトイレ掃除が楽しくなり、“様々な工夫”をするようになると言います。
この方法で掃除すると早くてより綺麗になる、とか。
この洗剤を使うと汚れが落ちる、とか。
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付けていると洗いにくいゴム手袋をやめ、力の入らない柄の長いブラシを捨て。
トイレがピカピカなった頃には、素手で洗っていたそうです。
見えない部分にまで手を入れて、素手の感触で汚れが落ちているか確認します。

橋本社長のトイレ掃除をきっかけに傳來工房さんの環境整備は前進。
社員達の協力を得ることにより、その活動は加速していきます。
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改善を怠らずコツコツと環境整備に取り組む日々。
雑然とした工場内が徐々に整理整頓され、社員達の意識も変化し、業務改善もなされていきました。
それに比例するように会社の業績が上向き始め、ついにはV字回復を成し遂げたそうです。



環境整備についての考え方とそれにまつわるエピソードなどをレポートしてきましたが。
少々長くなってしまいましたので、今回はここまでとさせて頂きます。

本当は今回(後編)でこのレポートを完結させたかったところですが

次回は完結編として傳來工房さんの環境整備の具体例や手法などを詳しくご紹介していきたいと思います。

最後までご覧頂きましてありがとうございました。
次回もご覧いただけたら嬉しいです。

完結編につづく。


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