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(今さら聞けない)木工塗装の基礎知識シリーズの第5回目です。
木工塗装に関する知識を(木材や塗料などについて)ご紹介しています。

今回のテーマは「塗膜白化の原因とその対処法 パート2」。
前回は高温多湿時の塗装作業中に起きる塗膜白化について解説しましたが、今回は“経年変化による塗膜の白化現象”を取り上げていきたいと思います。


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こちらは精巧な突き板の象嵌が施された美しい丸テーブルです。
写真では分かりにくいですが、天板全体がまだらに白化現象を起こしています。
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天板表面に近づいて見ましょう。
赤い丸の部分が特に白くなっている部分です。
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写真右下の赤い丸の部分は比較的白化が進んでなく、元のブラウン色が残っています。
部分的だけでなく全体的にうっすらと白っぽくなっているのが分かります。
こちらの丸テーブルはポリエステル樹脂塗装がされており、長い年月を経て徐々に塗膜が変質して白化を起こしていったようです。

【白いシミの主な原因は“水分”と“固体粒子”】
前回の高温多湿時の塗装作業中に起きる塗膜白化(ブラッシング)の原因は“結露”によるものでしたが、今回の白化の原因もやはり水分が関係します。
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画像引用:モノタロウ
塗膜に浸透していった“水分”が、塗膜内部の“固体粒子(Filler/フィラー)”と“塗膜樹脂(バインダー)”との界面に入り込み、可視光線を散乱させて白化したように見えるようです。

※ポリエステル樹脂塗装の場合、その塗膜と木地との密着不良による層間剥離が原因で白化する可能性もあります。

【特に“サンディングシーラー”が白化しやすい】
通常、木工塗装では最低でも数工程、多いときには数十工程の作業を行い仕上げていきます。
透明仕上げ(木目が見える仕上げ)の場合・・・
  1. 素地調整
  2. (木地着色)
  3. 下塗り⇒ウッドシーラーを塗装
  4. 中塗り⇒サンディングシーラーを塗装
  5. (補色/カラーリング)
  6. 上塗り⇒仕上げ用クリヤーを塗装
  7. (磨き)
大まかに言うとこの様な感じです。
※( )内は必要に応じて行います。
塗装工程
画像引用:モノタロウ
これらの塗装工程にはそれぞれ役割があり、その役割に応じた塗料を使用します(研磨などの塗料を使用しない工程は除く)。
様々な塗装工程の中、特に“中塗り工程”で使用される“サンディングシーラー”が白化現象を起こしやすいのです。

なぜサンディングシーラーは白化現象を起こしやすいのか
それは固形粒子(ステアリン酸亜鉛など)が多く配合されているからなのです。

通常塗膜の状態
画像引用:モノタロウ
「固形粒子が含まれていると透明度が失われるんじゃないの」。
と、無知な私は思ってしまいますが
ステアリン酸亜鉛(Filler)と塗膜樹脂との界面における光の屈折率が小さいので、サンディングシーラーは透明な塗膜になるそうです。

中塗り(サンディングシーラー)の役割は“塗装面を平滑にすること”です。
その役割を効率的に行うため、塗膜は“肉持ち性”(1回の塗装で厚い塗膜を付ける)や“研磨性”(研ぎ出しやすさ)が高められています。
塗料に配合される固形粒子は、肉持ち性を高めるための骨材として、研磨性を高めるための研磨材として機能します。

【改良されるサンディングシーラー】
「白化しやすいサンディングシーラーなんか使わなければ良い」。

単純にそう思いますよね。
しかし・・・短時間で平滑な塗装面を作ることが出来るとても便利な塗料ですから。
手放せないのが正直なところです。

短納期かつ高品質を求められる昨今の木工塗装業界にはサンディングシーラーは必要不可欠な存在でもあります。

「白化しにくいサンディングシーラーが欲しい」。

そんなニーズに応えるべく塗料メーカー各社による研究が進められ、現在ではかなり改良されているそうです。

【塗膜は熱を加えることで白化する】
湿った状態のテーブルの天板などに熱せられた鍋などを直に置いた場合、テーブルの天板の上に濡れ布巾を敷き、その上に熱々のやかんを乗せた時など、急激な温度上昇による浸透圧効果で、塗膜に水分が入り込むことにより一気に白化することがあります。
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こちらのセンターテーブルの天板には水分と熱が原因と思われる白化が見受けられました。
表面はポリウレタン樹脂塗装がされていました。
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天板表面に近づいて見ましょう。
この感じはいかにも何か熱い液体をこぼしたような
実際の理由はお客様にはお聞きしていないのですが・・・おそらくそれが原因だと思われます。
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こちらは以前このブログでご紹介したことのあるフビンガという木材の一枚板で作られた立派な天板です。
こちらもポリウレタン樹脂塗装がされていました。
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天板表面に近づいて見ましょう。
よくご覧頂くと無数の白い輪染みがあるのがお分かりになると思います。
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こちらの輪染みも熱と水分によるものです。
熱々の飲み物をいれたカップを直に置いたり、冷たい飲み物をいれて結露したグラスを直に長時間置きっぱなしにしたり。
その様な使い方が繰り返されることにより発生します。
大切に扱えば、ウレタン塗装がされた家具は10年~20年は綺麗に使うことが出来るものです。
ソーサーやコースターなどを使う心遣いで長持ちします。

【白化現象が起きてしまった時の対処法】
先ほど熱と水分により白化現象が起きると書いたばかりですが。
不思議なことに、白化現象を起こした部分に湿らせたタオルや手拭いなどの布を敷き、その上からアイロンを当てて熱を加えると白化が消える場合があります。
今回の最初にご紹介した、象嵌が施された丸テーブルの天板にその方法を試してみました。
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アイロンを当てる際、スチームもONにしておくと効果的。
徐々に白化した部分が元に戻ってきて、かなり白っぽさが和らぎました。
1度にあまり長時間やり過ぎないように、様子を見ながら熱い水蒸気を白化部分に当てていきます。
これならDIYでも気軽にチャレンジ出来そうです。
白化の発生と回復機構
画像引用:モノタロウ
こちらの方法で白化が直る場合が多いのですが・・・必ずしも直る訳ではありません。
また場合によっては逆に白化が悪化することもありますので注意が必要です。
この方法にチャレンジされる場合は、端の方で少しテストしてみるなど、慎重に行う事をおすすめします。
こちらの天板のようなポリエステル樹脂塗装のものや、ポリウレタン樹脂塗装の場合は比較的熱にも強いですが、ラッカー塗装などは熱に弱いのでより慎重な作業が必要です。

【確実に、綺麗に直すには塗膜剥離が必要】
やはり1度変質(白化)した塗膜は完全には元に戻りません。
アイロンで白化が直っても、後からまた白くなってくる場合もあります。
その様な場合は、白化した塗膜を剥離除去してから再塗装をするしかありません。
こちらの方法はDIYでは難しいと思いますので、私達の出番となるでしょう。
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ポリエステル塗装はとても強靱で、剥離剤(塗膜を溶かす薬剤)が効かないことが多いです。
ですからサンダーという機械を使って表面の塗膜を地道に削っていきました。
削り過ぎ厳禁繊細な細工が施された天板、もし削り過ぎたら大変なことになります
木地の突き板を痛めない様に細心の注意を払います。
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慎重な作業の末、白化を起こした塗膜だけを削り落とすことが出来ました
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そして再塗装を施していくと・・・

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↑施工前
↓施工後
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よしっ 綺麗になりました。
すっきりシャープな印象に生まれ変わりました。

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↑施工前
↓施工後
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表面の白ボケや細かい傷などが消えました。
象嵌の美しい細工が際立つ様にナチュラルな色合い仕上げ直しました。

《引用・参考サイト》Special Thanks
●塗料・塗装の何でも質問講座【通販モノタロウ】
https://www.monotaro.com/s/pages/readingseries/tosouqa/


それでは今回はこの辺で。
最後までご覧頂きましてありがとうございました。
次回もお楽しみに。


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