当ブログをご覧頂きまして誠にありがとうございます。

今回は鉄媒染についてご紹介したいと思います。
ところで鉄媒染はご存じでしょうか?

【小実験】鉄媒染(てつばいせん)について
ご存じでない方はこちらをご覧になってみて下さい。
当ブログにて去年(2021年)の3月6日に投稿した鉄媒染についての記事です。
こちらの記事が思いのほか好評でして。
投稿して約1年半が経つ現在でも、毎月コンスタントにGoogle検索から200~300のアクセス数がございまして、皆様の鉄媒染への関心の高さを感じておりますアリガタイデス

そのような訳で、今回はその第2弾をお届けいたします。


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鉄媒染とは主に草木染めに用いられる手法の1つようですが、木工塗装(木地を染色すること)にも応用することが出来ます。
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写真引用:Shukuko Quilt
そう、“草木染め”と言えば“布を染める”というイメージがありますが、合成染料(化学染料)を用いた染色に対して、天然染料を用いた染色を区別するための呼称で、特に布に限ったことではないようです。

さて、それでは小実験を始めていきましょう。
先ずは鉄媒染液を作ってきます。
鉄媒染液は簡単に作ることが出来ます。
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今回私達が用意したのはこちら。
そう、お酢とスチールウールだけ。
お酢(水で薄めない)の中にスチールウールを入れるだけで簡単
ちなみにお酢は比較的酸の濃度が高めのハインツ社製(ホワイトビネガーと呼ばれるトウモロコシから作られるもの)が良いそうです。
“錆びた鉄釘”を使ったりもするようですが、塗装部に錆びた釘の在庫は無く、釘を買ってきて錆びた釘を作るのも時間が掛かるので、手軽に出来る上記の方法にしました。
要は酸で鉄を溶かして鉄イオンを抽出出来れば良いようです。
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ネットで調べると、お酢:錆びた鉄釘:水=1:1:1で調合する方法もあるようですが・・・
お酢は原液で使いました。
しかもスチールウールは細い糸状の鉄なので、錆びていなくても酸との反応が良さそうです。
この状態で大体3~4日くらい放置しますが、今回はたしか1週間くらい放置したと思います。
やはり酸っぱ~い匂いがします
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そして、1週間くらい放置した状態がこちら。
お酢に鉄が溶け出してこげ茶色っぽい液体になりました。
鉄が溶け出したせいなのか、酸っぱい匂いが少し和らぎましたが、代わりに独特の(硫黄っぽい)匂いがしました。

鉄媒染は素材の中に鉄媒染液を染みこませて、鉄イオンとタンニンという成分を反応させて黒っぽく発色させる染色方法です。
なので、素材の中にタンニンが少ない場合はタンニンを補充する必要があります。
タンニンが多い液体と言えばお茶などが思いつきますが、今回は同じくタンニンが多いと言われている“柿渋”と“夜叉五倍子(やしゃぶし)”を使ってみました。
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柿渋はこちら。市販されているものを用意しました。
昔ながらの柿渋はその独特の匂いが気になるものですが、こちらはほぼ無臭で使いやすくなっています。

夜叉五倍子の液は売っていませんので自分達で作りました。
作り方はいたって簡単です。
乾燥した夜叉五倍子という木の実を水で煮だして作ります。
夜叉五倍子についてはこちらを参照(Wikipedia)
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夜叉五倍子の実はネットで購入しました。
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20個入りでたしか600円くらいで、こちらは観賞魚用の商品でした。
夜叉五倍子は水槽に入れることで水質改善にもなるんですね。
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見た目は小さな松ぼっくりみたいな形をしています。
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とりあえず半分の10個を水で煮出してみました。
水にタンニン成分が徐々に溶け出して琥珀色に変化していきます。

30分くらい煮出していくとこの様な色に。
ウーロン茶のような色ですね。

そして、冷ましてからさらに3日くらい置いておくと・・・
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あらっ真っ黒になってしまいました
夜叉五倍子の実も一緒にペットボトルに移して置いたせいかもしれませんが・・・まぁ、良い事にしましょう

これで一通り下準備が終了しました。
いよいよ木地を染めていきましょう。
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実験用のサンプル板を用意していきます。
前回の実験では無垢の板を使って行いましたが、今回はベニヤ板(突き板が貼られた合板)を使います。
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様々な樹種のベニヤ板の中、鉄媒染に適していそうなものをチョイス。
比較的木肌の色が薄く白っぽいものを使いました。
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こちらはメープルという材種の木地です。
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メープルにはタンニンを補充するために下塗りに柿渋を入れてみました。
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余分な柿渋をウエスで拭き取り、しばらく放置して表面を乾燥させます。
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そして、鉄媒染液を塗ってしばらく放置しておくと・・・
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この様な感じになりました。
思いのほか綺麗なグレーに染まりましたね

他の材種のサンプル板もメープルのものと同じ要領で作業を行いました。
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こちらはオークという材種の木地です。
左半分だけに下塗り(夜叉五倍子液)を入れて、乾燥後に全体的に鉄媒染液を塗布しています。
オークはタンニン成分の多い材種なので下塗りを入れなくても発色しますが、下塗りに夜叉五倍子液を塗った左半分はタンニン成分が多くなったので色が濃くなりました。
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こちらの写真の2枚のサンプル板はどちらもオークですが色味が違いますね。
右のサンプル板は先ほどの夜叉五倍子液を半分塗ったもので、左のサンプルは下塗りに柿渋を塗ったものです。
右の方はグレー系の色味に、左の方は茶色っぽく見えます。
同じ材種(オーク)だったとしても突き板の違い(原木の違い)によっても色が違ってくるとは思いますが、下塗りの種類によっても色が変わってくるのかもしれませんね。
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こちらはホワイトアッシュという材種の木地です。
左半分だけに下塗り(夜叉五倍子液)を入れています。
下塗りを入れていない右側はほとんど色が変わっていませんね。
材自体にほとんどタンニン成分が含まれていないことが分かります。
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こちらはパイン(米松)という材種の木地です。
左半分だけに下塗り(柿渋)を入れています。
ホワイトアッシュ同様、木地にほとんどタンニン成分が含まれていなそうですね。
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こちらは桐(きり)という材種の木地です。
左のサンプル板には下塗りに柿渋、右には下塗りに夜叉五倍子が入っています。
柿渋の方がタンニン成分が多いのか、濃い色に染まりました。
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こちらはアカシアコアという材種の木地です。
左半分だけに下塗り(夜叉五倍子液)を入れています。
右半分を見ると分かりますが、アカシアコアは部分によって材色の差が大きいのが特徴です。
左半分も同様に材色の差が大きかったのですが、染色されることによりそれが目立たなくなりました。
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こちらはゼブラウッドという材種の木地です。
下塗りに柿渋を入れているのですが、思いのほか良い雰囲気に染め上がりました

天然染料は色素の含有量が一定ではなく、単一の色素のみを持つことは少ないので、同じ色を再現することは不可能ですし、発色の調整も難しいと言われていますが。
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こちらはオークという材種の木地です。
鉄媒染液のみを塗布したものですが、媒染液の濃度を違えてみました。
右側には原液の鉄媒染液、左側には水で倍に希釈した鉄媒染液をそれぞれ塗り分けてみました。
すると倍希釈した左側の方が色が薄くなりました。
鉄媒染液の濃度を変えることによりある程度は色の濃さを調整することが出来そうです。

染色を終えたそれぞれの木地に仕上げのトップコートを行いました。
仕上げ方法は自然な風合いを活かすためにオイルフィニッシュをチョイス。
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キャピタルペイント株式会社様の“NA-6 オリオ2”という特殊なオイルフィニッシュ用の塗料を使用しました。2液型の耐久性の高いオイルフィニッシュ用の塗料です。
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塗り方はワトコオイルやオスモなどの普通のオイルフィニッシュ用塗料と同じ。
刷毛で塗料を塗布します。
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塗布したら、余計な塗料をウエスで拭き取ります。
不乾性油を使用したポリウレタン樹脂の特性を兼ね備えるNA-6 オリオ2は、乾性油を使用する普通のオイル塗料にあるような使用後のウエス発火の心配がないので安心感があります
ちなみに当塗料は乾燥を挟み2回塗りを行います。
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そして、一晩放置してしっかり乾燥させたらサンプル板は完成です。
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今回の実験では鉄媒染について様々な検証が出来て収穫ありでした
鉄媒染のことをもっと知りたい、極めたい
今後もこういった機会は設けていくべきだと思いました。
さらに違った条件や材種で鉄媒染実験を行いたいと思っております。
その時はまたこのブログでレポートさせて頂きます。


それでは今回はこの辺で。
長い投稿となりましたが、最後までご覧頂きまして誠にありがとうございました。
次回もお楽しみに。


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