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今回はおすすめの展覧会をご紹介したいと思います。
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画像引用:東京都現代美術館HP
●ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで
2022年7月16日(土)~10月16日(日)
@東京都現代美術館 企画展示室1階/地下2階
特設サイト:https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/Jean_Prouve/

20世紀の建築や工業デザインに大きな影響を与えた、フランスのデザイナーであり建築家のジャン・プルーヴェ氏(1901年~1984年)の仕事を紹介する大規模な展覧会が東京都現代美術館で開催されています。
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画像引用:東京都現代美術館HP
1930年代のフランスでル・コルビュジエやピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンと時代を同じく活躍し、彼らとの数々の共同作業を行いながら、家具から建築へと仕事を拡大していったジャン・プルーヴェ氏。
彼の業績は90年代以降再評価され、近年は国内外で高い人気がありますが、意外にもプルーヴェに関する情報は少なく、オリジナルとして現存する作品も少ないことから、本展覧会はとても貴重なものになっています。

本展覧会は、20世紀の建築家による家具を扱うフランスのギャラリー・パトリック・セガンと、アメリカのカルフォルニア州を拠点に活動するアートディレクターの八木保氏が共同で企画されたそう。
主に両者の所蔵作品に加えて、現代美術振興財団の会長である前澤友作氏やプルーヴェ家の所蔵作品により、オリジナルの家具や建築物およそ120点をスケッチや図面などの資料とともに展示されています。
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そのような興味深い展覧会が、弊社からほど近い(約徒歩10分の)東京都現代美術館で開催されてると言うことで気になってはいましたが、先日ようやく観に行くことが出来ました
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会場内は一部を除き撮影可となっておりました。
写真撮り放題なのは嬉しいですね。
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写真:「プレジダンス」デスクNo.201と「ディレクシオン」回転式オフィスチェアNo.353
1901年、パリに生まれたプルーヴェ氏は、画家の父と音楽家の母のもと、産業と芸術の融合を図ったアール・ヌーヴォーの一派であるナンシー派の影響下で、金工職人としてキャリアを出発させました。
素晴らしい環境で生まれたプルーヴェ氏は成るべくして成ったサラブレッドと言えるかもしれません。
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写真:壁面取付什器 ca.1942
30歳で自分のアトリエを構えた1930年代前後は、バウハウスやル・コルビュジエらがモダンデザインを牽引していた時代です。
プルーヴェ自身も当時のUAM(現代美術家協会)に参加し、コルビジェらと共にモダンデザインを追求する一方で、独自の家具デザインを追求していったようです。
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写真:ヴィシャード医師のためのテーブル
プルーヴェ氏の家具で特徴的なのが「折曲げ薄鋼板」や「アルミニウム板」など当時最先端の素材を多用している点です。
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展示されているのは全て70年~80年前のオリジナル品。
私個人的にはこの様なアンティーク感も見所の1つでした。
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会場で一際目を引いたプルーヴェ氏デザインの自転車の展示。
とても格好よかったです。
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大量の椅子の展示も印象的でした。
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家具の中でも「椅子」はプルーヴェ氏にとって重要であり、美しく整ったカタチを保ちつつ、剛性と人間工学に基づく合理性を併せ持つデザインを追求し続けたようです。
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写真:講義室用チェア(通称:ベルジェール)
彼曰く、「家具の構造を設計することは大きな建造物と同じくらい難しく、高い技術を必要とする」という言葉が示すとおり、椅子はプルーヴェ氏のものづくりの原則を反映していました。
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建築物の展示もとても興味深いものでした。
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当時は斬新なアイデアだったプレハブ(組み立て式)の住宅の展示。
独自の規格を用いて工場で生産した建築部材を組み合わせて短時間で建築。
このアイデアはプルーヴェ氏のもの。
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工場で生産された様々なファサードパネル。
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写真奥のファーサードパネルはアフリカの建築用にデザインされた「ブリーズ・ソレイユ(日除けルーバー)」。
手前の家具は熱帯気候型の家具だそうです。

現在では高層建築の工法として当たり前になっているカーテンウォール
そのアイデアもプルーヴェ氏によるものと聞いて驚きました。
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写真:国立高等工芸学校国際学生寮カフェテリア、パリ国際大学都市(フランス)
1930年代、市場の拡大にともなう大量生産の要請に応え、自身のアトリエの規模を拡大していきました。
公共機関や大学に向けた家具を数多く手掛けていくようになり、プルーヴェ氏は従業員を多く抱える経営者としての顔も持つようになりますが、その経営スタイルも独自のもので興味深かったです。

それは「自主自立、共創、協働」というもの。
企業利益の分配を従業員たちの采配に任せ、余った利益を設備投資に回す。
当時では画期的なシステムだったようですが、この方法で成功を納めることになったそうです。

そのようなエピソードに、現場のスタッフ達と一緒になってものづくりに勤しむ(楽しむ)プルーヴェ氏の姿が思い浮かびました。

プルーヴェ氏は自らをこう語っていたそうです。
I'm not an architect; I'm not an engineer- I'm a factory man.」
私は建築家でも技術者でもない、工人だ、と。

それは、自身のアトリエで図面を描き、必要とされる強度を得るために自ら試行し、常に現場と対話しながらものづくりを行う、建築家と技術者(職人)の両方の性質を兼ね備えた「工人(多能工)」でありたいという決意表明なのかもしれません。
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写真:調節機能付き1人がけ学校机(5~15歳向け)
そんなこんなで、半日掛かりで観てまいりました。
数多くあった展示の中で、今回ご紹介したのはほんの一部ですが。
非常に充実した展覧会で、とても面白かったです。

家具や建築にご興味のある方なら楽しめること請け合いです。
是非足を運んでみてください。

ジャン・プルーヴェ展は10月16日(日)まで。


それでは今回はこの辺で。
最後までご覧頂きましてありがとうございました。
次回もお楽しみに。


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