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前編からのつづき~
オーディオ用のスピーカー塗装の様子を前編と後編の2回に分けて詳しくご紹介しています。
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写真引用:カネコ木工様のHP
ご紹介しているのは、一般の方はお目に掛かることのないバックロードホーンスピーカーと呼ばれる特殊なスピーカーです。
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写真引用:カネコ木工様のHP
前編では、バックロードホーンスピーカーの特色や、今から約18年前に私達がバックロードホーンスピーカーに出会った頃の思い出などをご紹介しました。
今回はお客様からお預かりしたバックロードホーンスピーカーを塗装する様子をご紹介していきます。


そう、前回はスピーカー木地に素地調整(研磨作業)を施すところまでご紹介しましたね。
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表面が整ってきたところで木地着色を施していきます。
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先ずは木地着色用の着色剤を調色します。
退色しにくい顔料系の着色剤を使います。
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着色剤は木地に刷毛を使って塗布することが多いのですが、今回は吹き付けて塗布しました。
塗布後はすぐに余分な着色剤をウエスで拭き取っていきます。
着色剤を吹き付けて塗布するのには理由があります。
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写真の左側が塗装サンプル帳、右側が木地着色を終えたスピーカーです。
目標とするゴールドブラウン色より薄めに着色をしました。
薄めに木地着色をすることにも理由があります。
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【吹き付けによる着色剤の塗布&木地着色を薄めにする主な3つの理由】
1.散孔材のフィンランドバーチは着色ムラが出やすい木地だから
2.長年ご使用なさったスピーカーゆえに、表面に素地調整では消えなかった引っかき傷がいくつかあり、着色することにより傷が黒く出てしまうから
3.スピーカー内部の複雑な造作を固定するビス穴を隠す木栓が表面に多数存在するから

後ほどの"カラーリング”という工程で色調整を行い、上記のアラ(木地の問題点)を目立たなくしていきます。
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スピーカー開口部(ホーン内側)も奥までしっかりと着色していきます。
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細かい部分は小さなスプレーガンを使って塗り忘れのないように木地着色をしていきました。
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木地着色が終わったら、下塗り用の透明塗料を吹き付け塗装してきます。
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使用する塗料は2液型ポリウレタン樹脂塗料です。
下塗りには塗膜硬度が高く、肉付きの良い特殊なウッドシーラーを使用しました。
触指乾燥(指で軽く触れることが出来るくらいの乾燥度合い)をさせながら3回塗装します。
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こちらがウッドシーラーを3回塗装した後の木地の様子。
艶が出て木地の凸凹が目立ってきました。
この凸凹が無くなり、表面が平滑になるまで塗り込んでいきます。
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30分程度放置し、作業乾燥(研磨作業が行えるくらいの乾燥度合い)をさせて、表面をサンドペーパーで研磨します。
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ウッドシーラーを3回塗装し、乾燥後に表面を研磨。
その工程を1セットとして、それを繰り返していきます。
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午前中に木地着色と2セットの作業を行い、午後に3セットの作業を行いました。
この日はこれで作業終了。
一晩放置し、塗料をしっかりと乾燥させます。
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しっかりと塗り込んだおかげで、かなり塗膜が付いてきましたが・・・
さらに近づいて見てみましょう。
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スピーカー正面の板と側板の木口部分の境目が段差になっていますね。
少々大変になりますが、この段差が無くなるまで塗り込んでいきます。

そして次の日、作業再開。
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先日行ったセット工程をさらに繰り返し、ウッドシーラーを塗り込んでいきます。
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ある程度塗り込んだら、背の部分と底面と開口部(ホーン内側)は下塗り終了です。
スピーカー正面と天面と側板部分はさらにウッドシーラーを塗り込みますので、塗装ミストが入らないように開口部をマスキングしておきます。
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1に研磨、2に研磨・・・木工塗装で1番大変なのは研磨作業です。
しかしながら、仕上がりを左右するとても重要な工程なので手は抜けません

専門的な話になりますが・・・
研磨材が配合される肉付きの良いサンディングシーラーを使えば、下塗りの塗装回数を減らすことができる上に、比較的研磨も楽になるのですが。
今回はハイエンドのバックロードホーンスピーカーの塗装ということで音質への配慮もあり、塗膜の透明感と高い硬度を優先したので、サンディングシーラーは使用しませんでした。

今回使用した特殊なウッドシーラーの塗膜はとても硬く、いつもより増して研磨に手間が掛かりました
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うーん、何セット繰り返したのだろうか・・・
3日間かけてじっくりと下地を作っていきました。
特にスピーカー正面と天面と側板部分はかなり塗り込みました。
1セット3回だとすると…おそらく30回くらいは塗装したと思います

そのおかげで・・・
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↑塗り込み前
↓塗り込み後
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気になっていたスピーカー正面の板と側板の木口部分の境目が段差が無くなり、表面が平滑になりましたヨシッ
この状態で数日放置し、下塗りを完全に乾燥させます。

・・・そして後日。
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十分に下地が枯れたことを確認し、仕上げ前の研磨を行いました。
これで下塗りの研磨は最後になります。
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これまで180番~240番の粗めのサンドペーパーを使ってきましたが、最後の研磨は320番を使用。
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開口部もしっかりと研磨。
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しっかりと下塗りを塗り込んだおかげで、スピーカー表面は真っ平らです
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仕上げ前の研磨が終了したの図。
1番大変な下塗り工程が終わり、ようやく山場を越えた感じですフゥ~

いよいよ仕上げ工程に入っていきます。
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先ずは底面を仕上げていきます。
仕上げ用のフラットクリヤー(3分艶消の透明塗料)を使用します。
底面は見えない部分なので、サラッと仕上げです。
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乾燥したら、マスキングをしておきます。
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スピーカーを正位置に立てて、その他の面を仕上げていきます。
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こちらはスピーカーの側板部分です。
冒頭の木地着色の際に問題になった“ビス穴を隠す木栓”が白く浮き出て見えますね
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あぁ、天面部分にもいますね
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なので、とりあえずタッチアップ。
木栓を1つ1つ、筆を使って色を付けていきました。

すると・・・
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↑タッチアップ前
↓タッチアップ後
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側板に点在していた白い木栓が目立たなくなったでしょ?

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↑タッチアップ前
↓タッチアップ後
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近くで見るとタッチアップした感がありますが、この後のカラーリング工程で色調整を行うとさらに目立たなくなります。

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↑タッチアップ前
↓タッチアップ後
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天面も多少目立たなくなったでしょ。

そして、気になるカラーリング(色調整)工程に入ります
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先ずはカラーリング用の着色剤を調色します。
カラーリングには透明度が高い染料系の着色剤を使います。
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調色した着色剤と仕上げ用のフラットクリヤーを混ぜ合わせたカラークリヤーを作り、それをスピーカー表面にまんべんなく吹き付けて色を濃くしていきます。
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カラーリングを行うことで、目標とするゴールドブラウン色に近づけていきます。

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↑カラーリング前
↓カラーリング後
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よしっ
引き締まった印象になりました。
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木地着色を薄めにして、カラークリヤーを多めに乗せたおかげで、木栓の跡がだいぶ目立たなくなりました。
着色ムラも和らいだでしょ?
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天面の木栓の跡も完全には消えませんが、かなり目立たなくなったと思います

そして、トップコートのフラットクリヤーを塗装して終了です
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まるでガラス板を乗せたような仕上がり。
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もちろん開口部内側もしっかりと仕上げました。

後日お客様に弊社塗装スタジオへ足を運んで頂き、実際に仕上がり具合をご覧頂きました。
仕上がりにはご満足頂いたのですが・・・「もう少し艶を落として欲しい」とのことで、少々納期を頂戴し、トップコートを塗り直しさせて頂きました。
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↑塗り直し前(トップコート3分艶消)
↓塗り直し後(トップコート7分艶消)
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3分艶消だったトップコートを7分艶消に変更。
写真では違いが分かりにくいですが・・・
スピーカー表面の反射具合をご覧頂くと、若干艶が落ちているのがお分かりになると思います。
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スピーカー側板部分です。
艶が落ちたことによりさらに木栓の跡が目立たなくなりましたね。
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しっとりとした艶感になり、落ち着いた大人の雰囲気になりましたイイネー
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塗装が完了したスピーカーは、塗料やシンナーの匂いが取れるまでしばらくお預かりしてから、ヤマト急便さんを使ってご自宅にお届けしました。

そして後日、お客様よりお礼のメールを頂くことが出来ました
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また、ユニットを取り付けてご自宅のお部屋に設置したバックロードホーンスピーカーの写真を添付して頂きました。
(※写真はお客様のご了承を頂いて掲載させて頂きました)

塗装の仕上がりに大変ご満足頂けたようで良かったです。


少々長くなりましたが、今回はこの辺で。

最後までご覧頂きましてありがとうございました。
次回もお楽しみに。


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