当ブログをご覧頂きまして誠にありがとうございます。
~前編からのつづき~
郵送前のひととき、塗装部内品評会

1月9日、事務局に発送する直前。
作業場に塗装部スタッフ8名分の作品を並べ、簡単な品評会を行いました。
普段はそれぞれで別々の作業をすることも多い塗装部スタッフですが、この日は自然と作品を囲みながら、
「この下地処理、丁寧だな」
「この色の出し方、いいね」
「ここ、相当手間かかってるでしょう」
評価する側・される側というよりも、同じ職人同士が技術を共有する時間になっていたのが印象的でした。
さて・・・
それでは私たちの作品を1つずつ丁寧にご紹介していきましょう。
工場長・目黒大祐の作品

深みのある濃い朱色(溜色)を基調に、金彩で描かれた枝花文様が印象的な一作。
艶やかな仕上がりの中に、落ち着きと華やかさが同居しています。
角に丸みを持たせたフォルムは手に取った時の収まりも良く、面のつながりや曲線の処理からは、長年木工塗装に携わってきた工場長ならではのセンスの良さが伝わってきます。

側面に木地の表情を隠した部分(右側:ヘアライン模様の部分)が「抜け感」をつくり、全体のバランスを巧みにコントロール。
金彩の配置も過度ににならず、作品全体を引き締めるアクセントとして機能しています。
繁忙期の合間での制作とは思えない完成度で、確かな基礎技術と経験に裏打ちされた一作。
塗装部を率いる立場としての矜持が、静かに感じられる作品です。
ベテラン職人・石澤友美の作品
昨年度の技能コンクールでは、漆塗りの大作で最優秀賞を受賞した石澤。
→ブログ記事参照:木工塗装の匠たちが集結!技能コンクール2024会場の様子

今回出品した作品は、木地に砕いた卵の殻を一つ一つ漆で貼り付け、その上から黒のウレタン樹脂塗料を塗り込み、乾燥後に表面を研磨して卵殻を研ぎ出すという、非常に手間と神経を使う工程を経て完成させた一作です。

卵殻特有の不規則な割れ模様が研ぎによって浮かび上がり、単調になりがちなモノトーンの中に、奥行きとリズム感を生み出しています。
黒一色でまとめながらも重くなりすぎず、見る角度によって表情が変わる仕上げからは、素材の扱いに長けた石澤ならではの安定感と経験値が感じられます。

「どこまで研ぎ出すか」「どの表情で止めるか」。
判断の積み重ねが仕上がりを大きく左右する技法だけに、完成度の高さは確かな技術力の証と言えるでしょう。
静かでありながら強い存在感を放つ、技能コンクールにふさわしい力作です。
入社9年目・坪井真莉子の作品

規則正しく連なる波文様が印象的な、落ち着いた存在感を放つ一作。
深みのあるグリーンを基調とした色調は、光の当たり方によって表情を変え、静かな変化を楽しませてくれます。
文様の一つ一つはシャープでありながらも硬さを感じさせず、面のつながりや角の処理まで丁寧に仕上げられている点が印象的です。
繰り返しの模様だからこそ難しい、全体のバランスや均一感も高いレベルでまとめられています。

派手さに頼らず、色・質感・模様の関係性を冷静に組み立てていく姿勢は、入社8年目という経験値がしっかりと反映されたものと言えるでしょう。
日常使いのポケットティッシュBOXに、品のある佇まいと確かな完成度を与えた、好感の持てる技能コンクール作品です。
入社8年目・吉良栄香の作品
蛇紋塗装の技法を用い、真綿や薄い布を押し当てては剥がず工程を繰り返すことで、独特のうろこ状・まだら模様を表現した一作です。

落ち着いた色調の中に浮かび上がる柔らかな揺らぎは、一見すると偶然性のある表現に見えますが、模様の出方や濃淡のバランスには、丁寧なコントロールと繊細な感覚が感じられます。

角や面ごとに表情が変わり、見る角度によって印象が移ろう仕上がりは、蛇紋塗装ならではの魅力をしっかりと引き出しています。
確実な基礎力の上に、「自分らしさ」を重ねようとする意欲が伝わる、技能コンクールにふさわしい意欲作となりました。
入社5年目・山﨑隆史の作品

深い黒の中に、鮮やかなグリーンが浮遊するように広がる印象的な一作。
黒を基調とした塗膜の奥から、まるで苔や鉱石が覗くかのような表情が現れ、静かでありながら強い存在感を放っています。

グリーンの模様はランダムに見えつつも、全体で見ると密度や配置が巧みにコントロールされており、天面・側面・角へと視線が自然に流れる構成になっています。
艶のある塗膜が光を受けることで、模様に奥行きが生まれ、見る角度によって印象が大きく変わる点も魅力です。

また、ティッシュの取り出し口まわりの曲線処理や、エッジ部分の塗り込みも丁寧で、実用品として手に取ったときの完成度の高さもしっかりと感じられます。
入社4年目というキャリアの中で、色と質感による表現にじっくりと向き合い、「塗り」で見せることに真正面から挑戦した姿勢が伝わってくる作品です。
入社2年目・鎌田百奈の作品
深みのあるブルーでシンプルにまとめられたポケットティッシュBOXの上に、小さな白鳥のフィギュアがそっと佇む、遊び心あふれる一作です。

この白鳥は既製品ではなく、木を削り出して一から制作した手作りのもの。
小さなサイズながら、フォルムや首の曲線、表情まで丁寧につくり込まれています。

本体の塗装は落ち着いたマット調の上に、水面の揺らぎを思わせるような微かなテクスチャーが付けられています。
装飾を極力抑えたシンプルな面構成が、白鳥の存在をより印象的に引き立てています。
“つくる楽しさ”を素直に表現した、若手らしい魅力あふれた技能コンクール作品です。
入社2年目・桑原和宏の作品

白を基調としたシンプルな佇まいの中に、側面へ強いアクセントを加えた一作です。
箱のサイドに走るゼブラストライプは、彫刻刀で一本一本彫り込んだ溝に黒の塗料を入れて表現したもの。
「塗る」だけでなく「削る」工程を取り入れることで、模様に立体感と陰影が生まれています。

白い天面の柔らかな曲面と、側面のシャープなラインとの対比が明確で、シンプルながら視線を引きつける構成となっています。

丁寧な作業の積み重ねと、「どう見せるか」を考えた工夫が感じられる意欲的な作品です。
ベテラン職人(ブログ筆者)・小池忠由の作品

二つ一組で完成する構成の作品。

それぞれの箱が「陰」と「陽」を表現しており、並べることで模様として陰陽太極図が浮かび上がります。

「陰(Yin)」の箱

「陽(Yang)」の箱
単体でも成立するデザインでありながら、組み合わせることで初めて全体像が現れる。
長年ものづくりに携わってきたからこそ生まれる、構想力の高さが際立つ作品です。
・・・と、自分で言うのも何ですが(笑)

さらに、それぞれの箱に取り付けられた赤いボタンを押すと電飾が灯り、作品は一気に別の表情を見せる。
実用品であるポケットティッシュBOXに、視覚的な驚きと体験性を加えた、遊び心と完成度を兼ね備えた力作です。
次につなげていく
こうして8名分の作品を並べてみると、同じ課題、同じ素材から生まれたとは思えないほど、それぞれの技術や感性、考え方の違いがはっきりと表れていました。
繁忙期の合間を縫いながら、限られた時間の中で一つ一つの工程に向き合い、最後まで手を抜かず仕上げた作品ばかりです。
結果の如何にかかわらず、この制作過程そのものに意義があると感じています。
郵送前の品評会で交わされた言葉や視線、作品を前にした静かなやり取りも含めて、技能コンクールは技術を競う場であると同時に、互いの仕事を認め合い、次につなげていく大切な機会だと改めて実感しました。
今回の経験や気づきは、これからの仕事や後輩への指導、そして次回の作品づくりへと、確実につながっていきます。
また来年、同じように作業場に作品を並べ、それぞれの成長を確かめ合える日を楽しみにしながら。
塗装部は日々の仕事にこれからも真摯に向き合っていきます。
次回予告
なお、去る1月18日に開催された技能コンクール審査発表会の様子や結果については、東京木工塗装技能士会の総会・新年会と同時開催された当日の雰囲気と合わせて、次回のブログで改めてレポートする予定です。
果たして、私たちの作品は入賞することが出来たのか?
会場の様子や審査を通じて感じた事、その結果も含めてお伝えしていきます。
~出品作品のその後、第19回技能コンクール結果レポートへつづく~
・
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それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
次回もお楽しみに
●ニシザキ工芸株式会社塗装部HP
https://tosou.nishizaki.co.jp/
●特注家具・ニシザキ工芸株式会社HP
https://www.nishizaki.co.jp/
~前編からのつづき~
郵送前のひととき、塗装部内品評会

1月9日、事務局に発送する直前。
作業場に塗装部スタッフ8名分の作品を並べ、簡単な品評会を行いました。
普段はそれぞれで別々の作業をすることも多い塗装部スタッフですが、この日は自然と作品を囲みながら、
- 塗りの狙い
- 工程で工夫した点
- 上手くいったところ
- 正直、苦労したところ
「この下地処理、丁寧だな」
「この色の出し方、いいね」
「ここ、相当手間かかってるでしょう」
評価する側・される側というよりも、同じ職人同士が技術を共有する時間になっていたのが印象的でした。
さて・・・
それでは私たちの作品を1つずつ丁寧にご紹介していきましょう。
工場長・目黒大祐の作品

深みのある濃い朱色(溜色)を基調に、金彩で描かれた枝花文様が印象的な一作。
艶やかな仕上がりの中に、落ち着きと華やかさが同居しています。
角に丸みを持たせたフォルムは手に取った時の収まりも良く、面のつながりや曲線の処理からは、長年木工塗装に携わってきた工場長ならではのセンスの良さが伝わってきます。

側面に木地の表情を隠した部分(右側:ヘアライン模様の部分)が「抜け感」をつくり、全体のバランスを巧みにコントロール。
金彩の配置も過度ににならず、作品全体を引き締めるアクセントとして機能しています。
繁忙期の合間での制作とは思えない完成度で、確かな基礎技術と経験に裏打ちされた一作。
塗装部を率いる立場としての矜持が、静かに感じられる作品です。
ベテラン職人・石澤友美の作品
昨年度の技能コンクールでは、漆塗りの大作で最優秀賞を受賞した石澤。
→ブログ記事参照:木工塗装の匠たちが集結!技能コンクール2024会場の様子

今回出品した作品は、木地に砕いた卵の殻を一つ一つ漆で貼り付け、その上から黒のウレタン樹脂塗料を塗り込み、乾燥後に表面を研磨して卵殻を研ぎ出すという、非常に手間と神経を使う工程を経て完成させた一作です。

卵殻特有の不規則な割れ模様が研ぎによって浮かび上がり、単調になりがちなモノトーンの中に、奥行きとリズム感を生み出しています。
黒一色でまとめながらも重くなりすぎず、見る角度によって表情が変わる仕上げからは、素材の扱いに長けた石澤ならではの安定感と経験値が感じられます。

「どこまで研ぎ出すか」「どの表情で止めるか」。
判断の積み重ねが仕上がりを大きく左右する技法だけに、完成度の高さは確かな技術力の証と言えるでしょう。
静かでありながら強い存在感を放つ、技能コンクールにふさわしい力作です。
入社9年目・坪井真莉子の作品

規則正しく連なる波文様が印象的な、落ち着いた存在感を放つ一作。
深みのあるグリーンを基調とした色調は、光の当たり方によって表情を変え、静かな変化を楽しませてくれます。
文様の一つ一つはシャープでありながらも硬さを感じさせず、面のつながりや角の処理まで丁寧に仕上げられている点が印象的です。
繰り返しの模様だからこそ難しい、全体のバランスや均一感も高いレベルでまとめられています。

派手さに頼らず、色・質感・模様の関係性を冷静に組み立てていく姿勢は、入社8年目という経験値がしっかりと反映されたものと言えるでしょう。
日常使いのポケットティッシュBOXに、品のある佇まいと確かな完成度を与えた、好感の持てる技能コンクール作品です。
入社8年目・吉良栄香の作品

蛇紋塗装の技法を用い、真綿や薄い布を押し当てては剥がず工程を繰り返すことで、独特のうろこ状・まだら模様を表現した一作です。

落ち着いた色調の中に浮かび上がる柔らかな揺らぎは、一見すると偶然性のある表現に見えますが、模様の出方や濃淡のバランスには、丁寧なコントロールと繊細な感覚が感じられます。

角や面ごとに表情が変わり、見る角度によって印象が移ろう仕上がりは、蛇紋塗装ならではの魅力をしっかりと引き出しています。
確実な基礎力の上に、「自分らしさ」を重ねようとする意欲が伝わる、技能コンクールにふさわしい意欲作となりました。
入社5年目・山﨑隆史の作品

深い黒の中に、鮮やかなグリーンが浮遊するように広がる印象的な一作。
黒を基調とした塗膜の奥から、まるで苔や鉱石が覗くかのような表情が現れ、静かでありながら強い存在感を放っています。

グリーンの模様はランダムに見えつつも、全体で見ると密度や配置が巧みにコントロールされており、天面・側面・角へと視線が自然に流れる構成になっています。
艶のある塗膜が光を受けることで、模様に奥行きが生まれ、見る角度によって印象が大きく変わる点も魅力です。

また、ティッシュの取り出し口まわりの曲線処理や、エッジ部分の塗り込みも丁寧で、実用品として手に取ったときの完成度の高さもしっかりと感じられます。
入社4年目というキャリアの中で、色と質感による表現にじっくりと向き合い、「塗り」で見せることに真正面から挑戦した姿勢が伝わってくる作品です。
入社2年目・鎌田百奈の作品

深みのあるブルーでシンプルにまとめられたポケットティッシュBOXの上に、小さな白鳥のフィギュアがそっと佇む、遊び心あふれる一作です。

この白鳥は既製品ではなく、木を削り出して一から制作した手作りのもの。
小さなサイズながら、フォルムや首の曲線、表情まで丁寧につくり込まれています。

本体の塗装は落ち着いたマット調の上に、水面の揺らぎを思わせるような微かなテクスチャーが付けられています。
装飾を極力抑えたシンプルな面構成が、白鳥の存在をより印象的に引き立てています。
“つくる楽しさ”を素直に表現した、若手らしい魅力あふれた技能コンクール作品です。
入社2年目・桑原和宏の作品

白を基調としたシンプルな佇まいの中に、側面へ強いアクセントを加えた一作です。
箱のサイドに走るゼブラストライプは、彫刻刀で一本一本彫り込んだ溝に黒の塗料を入れて表現したもの。
「塗る」だけでなく「削る」工程を取り入れることで、模様に立体感と陰影が生まれています。

白い天面の柔らかな曲面と、側面のシャープなラインとの対比が明確で、シンプルながら視線を引きつける構成となっています。

丁寧な作業の積み重ねと、「どう見せるか」を考えた工夫が感じられる意欲的な作品です。
ベテラン職人(ブログ筆者)・小池忠由の作品

二つ一組で完成する構成の作品。

それぞれの箱が「陰」と「陽」を表現しており、並べることで模様として陰陽太極図が浮かび上がります。

「陰(Yin)」の箱

「陽(Yang)」の箱
単体でも成立するデザインでありながら、組み合わせることで初めて全体像が現れる。
長年ものづくりに携わってきたからこそ生まれる、構想力の高さが際立つ作品です。
・・・と、自分で言うのも何ですが(笑)

さらに、それぞれの箱に取り付けられた赤いボタンを押すと電飾が灯り、作品は一気に別の表情を見せる。
実用品であるポケットティッシュBOXに、視覚的な驚きと体験性を加えた、遊び心と完成度を兼ね備えた力作です。
次につなげていく
こうして8名分の作品を並べてみると、同じ課題、同じ素材から生まれたとは思えないほど、それぞれの技術や感性、考え方の違いがはっきりと表れていました。
繁忙期の合間を縫いながら、限られた時間の中で一つ一つの工程に向き合い、最後まで手を抜かず仕上げた作品ばかりです。
結果の如何にかかわらず、この制作過程そのものに意義があると感じています。
郵送前の品評会で交わされた言葉や視線、作品を前にした静かなやり取りも含めて、技能コンクールは技術を競う場であると同時に、互いの仕事を認め合い、次につなげていく大切な機会だと改めて実感しました。
今回の経験や気づきは、これからの仕事や後輩への指導、そして次回の作品づくりへと、確実につながっていきます。
また来年、同じように作業場に作品を並べ、それぞれの成長を確かめ合える日を楽しみにしながら。
塗装部は日々の仕事にこれからも真摯に向き合っていきます。
次回予告
なお、去る1月18日に開催された技能コンクール審査発表会の様子や結果については、東京木工塗装技能士会の総会・新年会と同時開催された当日の雰囲気と合わせて、次回のブログで改めてレポートする予定です。
果たして、私たちの作品は入賞することが出来たのか?
会場の様子や審査を通じて感じた事、その結果も含めてお伝えしていきます。
~出品作品のその後、第19回技能コンクール結果レポートへつづく~
・
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それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
次回もお楽しみに
●ニシザキ工芸株式会社塗装部HP
https://tosou.nishizaki.co.jp/
●特注家具・ニシザキ工芸株式会社HP
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