初ヨーロッパはミラノへ。
ハーフェレー視察ツアーで見た、世界の家具デザインの数々
ミラノサローネ2026視察記・第1部

当ブログをご覧頂きまして誠にありがとうございます。
先日、4月21日から28日までの8日間、イタリア・ミラノで開催された Salone del Mobile.Milano(サローネ・デル・モービレ・ミラノ)、日本語でいうところの「ミラノサローネ国際家具見本市」へ視察旅行に行ってきました。
今回は、ハーフェレ(Häfele)ジャパンさんが企画された「2026 ミラノサローネ視察ツアー」に参加させて頂きました。
ハーフェレさんは、家具金物・建具金物・家具用LED照明・家具用電子錠などを提供する国際企業で、1923年に始まった歴史あるドイツのメーカーです。家具づくりや内装に関わる人間にとっては、“見えないところで家具の使い心地を支える存在”と言えるかもしれません。

今回の視察記は、内容が盛りだくさんになりそうなので、3部作くらいに分けてお届けしたいと思います。
第1部では、まず「ミラノサローネとはどんな展示会なのか?」というところから、羽田空港を出発し、ミラノ到着後にさっそく街中のショールームを巡った初日の様子までをレポートします。
そもそも、ミラノサローネとは?
ミラノサローネは、正式には Salone del Mobile.Milano(サローネ・デル・モービレ・ミラノ)と呼ばれる、世界最大級の家具・インテリアの国際見本市です。
1961年にイタリア家具・インテリア産業の輸出促進を目的として始まり、現在では世界中の家具、インテリア、キッチン、照明、建築、デザイン関係者が注目する一大イベントとなっています。

ミラノサローネは毎年4月頃に、ミラノ郊外の大規模展示会場 Fiera Milano Rho(フィエラ・ミラノ・ロー)で開催されており、2026年は4月21日から26日の6日間で、167カ国から316,342人が来場し、32カ国から1,900ブランドが出展したとのこと。
数字だけ見ても、そのスケールの大きさに圧倒されます。

「ミラノサローネ」と聞くと、巨大な展示会場に家具ブランドが集まるイベント、というイメージが強いかもしれません。もちろんそれは正しいのですが、実際に現地へ行ってみると、それだけでは語りきれない広がりがありました。

その代表的なものが、Fuori Salone(フォーリ・サローネ)です。
“Fuori”はイタリア語で「外」を意味する言葉で、Fuori Saloneは直訳すると「サローネの外」。
つまり、Fiera Milano Rhoの本会場だけでなく、ミラノ市内のショールーム、ギャラリー、ショップ、歴史的建築、空きスペースなどを使って行われる市内展示やイベントのことを指します。

この Fiera会場で行われる Salone del Mobile.Milano と、ミラノ市内各所で行われる Fuori Salone。
この二つを合わせた期間全体が、一般的に Milano Design Week(ミラノデザインウィーク)と呼ばれています。
つまりミラノサローネ期間中のミラノは、展示会場だけでなく、街そのものが大きなデザインイベントの舞台になります。
有名ブランドのショールームでは新作発表が行われ、街角にはインスタレーションが現れ、キャラリーやショップでも様々な展示が開かれます。家具を“製品”として見るだけでなく、空間、建築、素材、照明、アート、ライフスタイルまで含めて体感できるのが、ミラノデザインウィークの大きな魅力です。

今回の視察でも、Fiera会場の本格的な展示はもちろん、ミラノ市内のショールームや建築を巡る時間がありました。
第1部でご紹介する LAGO、elmar、Bulthaup のショールーム見学や、Repubblica地区周辺の街歩きも、まさにこの Fuori Salone 的な楽しみ方のひとつだったと思います。
家具塗装の仕事をしている私にとっても、これは単なる海外旅行ではなく、世界の家具づくりや素材の見せ方、色の使い方、仕上げの考え方を肌で感じる貴重な機会でした。
「家具の展示会を見に行く」というより、ミラノという街全体を通して、世界のデザインの空気を浴びに行く。そんな表現がしっくりくる体験でした。
羽田空港から、いざヨーロッパへ
出発は羽田空港。
私はこれまで海外旅行の経験はありましたが、ヨーロッパへ行くのは今回が初めてでした。

空港に着いた時点で、すでに気持ちは少し高ぶっていました。大きなスーツケースを引きながら、これから本当にイタリアまで行くのかと思うと、期待と不安が入り混じったなんとも言えない感覚になります。
「ちゃんと乗り継ぎできるだろうか」
「現地で言葉は通じるだろうか」
「本場の家具展示会とは、いったいどんな世界なのだろうか」
そんなことを考えながら、ハーフェレさんのツアー参加者の皆さんと合流し、いよいよ出発です。
今回利用したのはフィンランド航空。羽田空港からフィンランドのヘルシンキ空港を経由し、そこからイタリア・ミラノのマルペンサ空港へ向かうルートでした。

現在、ロシアによるウクライナ侵攻の影響などにより、欧州系航空会社はロシア上空を避けるルートを取っています。フィンランド航空も、ロシア上空を避け、風向きなどの条件によって北極圏を通る北回りルート、または中央アジアを通る南回りルートを選択していると説明しています。
今回のフライトでも、地図を見ると通常の感覚とはかなり違う北回りのルート。
北極海方面を通ってヨーロッパへ向かうというだけで、初ヨーロッパの旅がさらに特別なものに感じられました。
ヘルシンキ経由で、ミラノ・マルペンサ空港へ
約12時間の長いフライトを経て、まずはフィンランドのヘルシンキ空港へ到着。

空港の雰囲気もどこか静かで洗練されていて、「ああ、ヨーロッパに来たんだな」と感じます。
そこからさらに乗り継ぎ、イタリア・ミラノのマルペンサ空港へ。

日本からの移動時間は長かったものの、機内から見える景色や、少しずつ変わっていく空港の雰囲気に、疲れよりも好奇心の方が勝っていたように思います。

マルペンサ空港に到着後は、チャーターしたバスでホテルへ移動しました。空港からホテルまでは、およそ1時間ほど。
バスの窓から見える街並みや道路標識、建物の色、車の走り方まで、日本とは全く違っていて、ただ移動しているだけでも目に入るものすべてが新鮮でした。
宿泊先は、味わいのあるリノベーションホテル
今回宿泊したのは、ミラノ郊外にある Starhotels Business Palace(スターホテルズ・ビジネスパレス)というホテルです。

ホテルは市内中心部から少し離れた場所にありますが、徒歩3分ほどのところにミラノ地下鉄(ATM)M3線の Porto Di Mare(ポルト・ディ・マーレ)駅があり、中心部への移動も比較的スムーズでした。

印象的だったのは、ホテルの建物そのものです。
外観や館内の雰囲気からは、古い工場か何かの施設をフルリノベーションしたような趣が感じられました。きれいに整えられていて快適なのですが、どこか新築のホテルとは違う、時間を重ねた建物ならではの味わいがあります。

古い建物を壊して新しくするのではなく、その雰囲気や骨格を活かしながら、現代のホテルとして使いやすく蘇らせる。
そうした感覚に、古いものを大切にしながら今の暮らしを取り入れていく、イタリアらしい文化を感じました。
家具や木工塗装の仕事でも、古くなったものをただ捨てるのではなく、手を入れてもう一度美しく使えるようにすることがあります。
そう考えると、このホテルの佇まいにもどこか共感できるものがあり、旅の拠点としてだけでなく、建物そのものも印象に残る宿泊先でした。
チェックインまでの時間で、さっそくミラノの街へ
ホテルに到着したものの、チェックインまで少し時間がありました。
せっかくミラノまで来たのだから、ただロビーで待っているのはもったいない。
ということで、まずは手始めに周辺を散策してみることにしました。

最寄り駅の Porto Di Mare(ポルト・ディ・マーレ)へ。
まず、切符を買うのも一苦労でした。
日本の電車のように「目的地までいくら」という距離ごとの運賃に慣れていると、ミラノの地下鉄の仕組みは少し戸惑います。ミラノの公共交通機関(ATM)のチケットは、距離というより、最初に有効化してから何分・何時間使えるかという考え方が中心です。
代表的なチケットには、次のようなものがあります。
それでも、一緒に行動させて頂いた手練れの方に教えてもらいながらなんとか購入しました。
日本の交通系ICカードの便利さに慣れている身としては、最初の1枚を買うだけでもちょっとした冒険です。

ここから地下鉄に乗り、10駅目の Repubblica(レプッブリカ)駅へ。
初めてのミラノ地下鉄は、少し緊張しながらも、乗ってしまえば意外とわかりやすく、街へ入っていく実感が一気に湧いてきました。
そして目的地へ到着。

この Repubblica駅周辺では、3つの家具・キッチンブランドのショールームを見学しました。
訪問したのは、LAGO、elmar、Bulthaup の3ブランドです。
LAGO ― 軽やかで、空間に余白をつくる家具
最初に見学したのは LAGO(ラーゴ)。

LAGOは、イタリアのモダン家具ブランドで、住まいだけでなく、ホテル、ワークスペース、レストラン、店舗などにも対応するモジュール家具を展開しています。
公式サイトでも、Made in Italyのモジュール家具を、家庭空間から公共的な場所まで幅広く提案していることが紹介されています。

ショールームで印象的だったのは、家具そのものが主張しすぎず、空間の中に“軽やかに浮いている”ように見えること。

大きな収納やテーブルであっても、重たく見せない工夫が随所にあり、脚元の抜け感や、面の構成、色のトーンの使い方がとても上手でした。

塗装職人の目線で見ると、こうしたシンプルなデザインほど、実は仕上げの粗が隠せません。
面が広く、装飾が少ない家具は、塗装面の均一さ、角の立ち方、エッジの処理、光の反射の仕方がそのまま品質として見えてきます。
「シンプルに見せるためには、細部が相当きちんとしていなければならない」
そんなことを改めて感じさせられるショールームでした。
elmar ― キッチンを“生活の中心”として見せる提案
次に訪れたのは elmar(エルマー)。

elmarは、オーダーメイドのキッチンを中心に、デザイン、技術、素材を組み合わせた Made in Italy のキッチンブランドです。公式サイトでは、使う人の個性を反映したカスタムメイドのキッチン、統合された技術、優れた素材を特徴として紹介しています。

特に印象に残ったのは、キッチンを単なる調理設備としてではなく、暮らしの中心にある家具として見せていたことです。


扉を閉じた時には美しい壁面収納のように見え、開くと内部に機能が現れる。
その切り替わりがとても自然で、生活感を隠すのではなく、デザインとして整えているのように感じました。
elmarの「@Home」というシステムは、2014年のミラノサローネで発表されたもので、従来の柱状収納を同一面の連続したキャビネットに変え、内部をさまざまな機能にカスタマイズできる仕組みとして紹介されています。


塗装職人として気になったのは、素材の切り替え部分です。
木質、金属、石材、塗装面。異なる素材が隣り合うと、どうしても段差や光沢差、見切りの粗さが出やすいものですが、ショールームではその取り合いが非常に美しく見えました。


家具でもキッチンでも、最後に全体の印象を決めるのは、やはり“納まり”なのだと感じます。
Bulthaup ― 引き算の美しさを感じるキッチン
3つ目は Bulthaup(ブルトハウプ)。

Bulthaup はドイツのプレミアムキッチンブランドで、使う人のニーズに合わせたキッチンづくりを特徴としています。公式サイトでは、その特徴をドラマチックに説明されています。


実際に見て感じたのは、とにかく“余計なものがない”ということ。


派手な装飾で目を引くのではなく、線の細さ、面の整い方、素材の質感で勝負している印象でした。

これは塗装の仕事にも通じるところがあります。
綺麗に塗る、艶、色を合わせるという技術はもちろん大切ですが、最終的に「上質だな」と感じるものは、必要以上に語りすぎないものだったりします。

面が静かで、角が整っていて、手触りに違和感がない。
そうゆう当たり前のようで難しいことが、空間全体の品格につながっているのだと感じました。
ミラノの街で食べた、ちょっと高級なパニーニ
ショールームの見学の合間、少し小腹が空いたので、近くのカフェに入りました。
そこで購入したのが、ホットサンドイッチ、いわゆるパニーニです。

お値段は6.5ユーロ。日本円にすると、感覚的には1,200円くらい。
日本のコンビニやカフェの感覚からすると、正直「ちょっと高いな」と思いました。
ところが食べてみると、本格的な生ハムとチーズがしっかりと入っていて、パンも大きく、かなり食べ応えがあります。
街を歩きながらパクつくにはちょうどよく、むしろ「この内容なら納得かも」と感じました。
海外に来ると、こうした何気ない食べ物ひとつででも、その土地の空気を感じられるのが面白いところです。
カフェでさっと買ったパニーニを片手に、ミラノの街を歩く。
それだけで、少しだけ現地の人になったような気分になりました。
街歩きの途中で見た「垂直の森」
Repubblica周辺を歩いていると、遠くにとても印象的な建築が見えました。

それが、ミラノの有名建築 Bosco Verticale(ボスコ・ヴェルティカーレ)。日本語にすると「垂直の森」です。

Bosco Verticale は、ミラノ中心部の Porta Nuova地区に建つ2棟の住宅タワーで、高さは110mと76m。建物のバルコニーには、800本の樹木、4,500本の低木、20,000本の植物が配置されているそうです。
公式情報では、都市の敷地を広げずに自然を高密度に取り込む「都市の森林化」のモデルとして位置づけられ、微粒子やCO2の吸収、酸素の生成、水管理、騒音低減、生活の質の向上などにも寄与すると言われています。
初日の締めくくりは、ホテル近くのピッツァレストランへ
この日は、長い移動のあとにもかかわらず、ホテル到着後すぐに地下鉄に乗り、ショールームを巡り、街を歩き、ミラノの空気をたっぷりと感じる一日となりました。
夕方にはいったんホテルに戻り、夜はホテル近くのピッツァレストランで夕食。
せっかくイタリアに来たのだから、やはり本場のイタリアンを味わいたいところです。
お店ではワインを飲みながら、前菜、肉料理とサラダ、大判のピッツァ、さらには大盛りのパスタまで、これぞイタリアンという料理をお腹いっぱい楽しみました。
移動の疲れもありましたが、美味しい料理とワインで気分もすっかりほぐれ、初日の夜から楽しい食事となりました。
写真を撮り忘れてしまったのが、非常に残念なのですが。
ちなみにお値段は、1人当たり50ユーロほど。日本円にすると約9,000円くらいです。
日本の感覚からすると、やはり少々割高に感じます。カフェで食べたパニーニもそうでしたが、実際に現地で食事をしてみると、イタリアの物価の高さを肌で感じる場面もありました。
とはいえ、本場の雰囲気の中でワインを飲み、前菜からピッツァ、パスタまでしっかり味わえたことを考えると、旅の初日としてはとても贅沢で、印象に残る夕食になりました。
初ヨーロッパ、初ミラノ、そして初日から家具ショールーム巡り。
期待と不安が入り混じって始まった旅でしたが、終わってみれば「これはすごい経験になりそうだ」という予感に変わっていました。
次回、第2部では、いよいよミラノサローネ本会場で見た展示や、世界の家具ブランドの空間づくり、そして塗装職人の目線で感じた素材・色・仕上げについてレポートしていきたいと思います。
~塗装職人が巡る、ミラノサローネ2026視察レポート2 会場編につづく~
・
・
初っ端からかなり長い記事になってしまいましたが・・・
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
次回もお楽しみに
●ニシザキ工芸株式会社塗装部HP
https://tosou.nishizaki.co.jp/
●特注家具・ニシザキ工芸株式会社HP
https://www.nishizaki.co.jp/
ハーフェレー視察ツアーで見た、世界の家具デザインの数々
ミラノサローネ2026視察記・第1部

当ブログをご覧頂きまして誠にありがとうございます。
先日、4月21日から28日までの8日間、イタリア・ミラノで開催された Salone del Mobile.Milano(サローネ・デル・モービレ・ミラノ)、日本語でいうところの「ミラノサローネ国際家具見本市」へ視察旅行に行ってきました。
今回は、ハーフェレ(Häfele)ジャパンさんが企画された「2026 ミラノサローネ視察ツアー」に参加させて頂きました。
ハーフェレさんは、家具金物・建具金物・家具用LED照明・家具用電子錠などを提供する国際企業で、1923年に始まった歴史あるドイツのメーカーです。家具づくりや内装に関わる人間にとっては、“見えないところで家具の使い心地を支える存在”と言えるかもしれません。

今回の視察記は、内容が盛りだくさんになりそうなので、3部作くらいに分けてお届けしたいと思います。
第1部では、まず「ミラノサローネとはどんな展示会なのか?」というところから、羽田空港を出発し、ミラノ到着後にさっそく街中のショールームを巡った初日の様子までをレポートします。
そもそも、ミラノサローネとは?
ミラノサローネは、正式には Salone del Mobile.Milano(サローネ・デル・モービレ・ミラノ)と呼ばれる、世界最大級の家具・インテリアの国際見本市です。
1961年にイタリア家具・インテリア産業の輸出促進を目的として始まり、現在では世界中の家具、インテリア、キッチン、照明、建築、デザイン関係者が注目する一大イベントとなっています。

ミラノサローネは毎年4月頃に、ミラノ郊外の大規模展示会場 Fiera Milano Rho(フィエラ・ミラノ・ロー)で開催されており、2026年は4月21日から26日の6日間で、167カ国から316,342人が来場し、32カ国から1,900ブランドが出展したとのこと。
数字だけ見ても、そのスケールの大きさに圧倒されます。

「ミラノサローネ」と聞くと、巨大な展示会場に家具ブランドが集まるイベント、というイメージが強いかもしれません。もちろんそれは正しいのですが、実際に現地へ行ってみると、それだけでは語りきれない広がりがありました。

その代表的なものが、Fuori Salone(フォーリ・サローネ)です。
“Fuori”はイタリア語で「外」を意味する言葉で、Fuori Saloneは直訳すると「サローネの外」。
つまり、Fiera Milano Rhoの本会場だけでなく、ミラノ市内のショールーム、ギャラリー、ショップ、歴史的建築、空きスペースなどを使って行われる市内展示やイベントのことを指します。

この Fiera会場で行われる Salone del Mobile.Milano と、ミラノ市内各所で行われる Fuori Salone。
この二つを合わせた期間全体が、一般的に Milano Design Week(ミラノデザインウィーク)と呼ばれています。
つまりミラノサローネ期間中のミラノは、展示会場だけでなく、街そのものが大きなデザインイベントの舞台になります。
有名ブランドのショールームでは新作発表が行われ、街角にはインスタレーションが現れ、キャラリーやショップでも様々な展示が開かれます。家具を“製品”として見るだけでなく、空間、建築、素材、照明、アート、ライフスタイルまで含めて体感できるのが、ミラノデザインウィークの大きな魅力です。

今回の視察でも、Fiera会場の本格的な展示はもちろん、ミラノ市内のショールームや建築を巡る時間がありました。
第1部でご紹介する LAGO、elmar、Bulthaup のショールーム見学や、Repubblica地区周辺の街歩きも、まさにこの Fuori Salone 的な楽しみ方のひとつだったと思います。
家具塗装の仕事をしている私にとっても、これは単なる海外旅行ではなく、世界の家具づくりや素材の見せ方、色の使い方、仕上げの考え方を肌で感じる貴重な機会でした。
「家具の展示会を見に行く」というより、ミラノという街全体を通して、世界のデザインの空気を浴びに行く。そんな表現がしっくりくる体験でした。
羽田空港から、いざヨーロッパへ
出発は羽田空港。
私はこれまで海外旅行の経験はありましたが、ヨーロッパへ行くのは今回が初めてでした。

空港に着いた時点で、すでに気持ちは少し高ぶっていました。大きなスーツケースを引きながら、これから本当にイタリアまで行くのかと思うと、期待と不安が入り混じったなんとも言えない感覚になります。
「ちゃんと乗り継ぎできるだろうか」
「現地で言葉は通じるだろうか」
「本場の家具展示会とは、いったいどんな世界なのだろうか」
そんなことを考えながら、ハーフェレさんのツアー参加者の皆さんと合流し、いよいよ出発です。
今回利用したのはフィンランド航空。羽田空港からフィンランドのヘルシンキ空港を経由し、そこからイタリア・ミラノのマルペンサ空港へ向かうルートでした。

現在、ロシアによるウクライナ侵攻の影響などにより、欧州系航空会社はロシア上空を避けるルートを取っています。フィンランド航空も、ロシア上空を避け、風向きなどの条件によって北極圏を通る北回りルート、または中央アジアを通る南回りルートを選択していると説明しています。
今回のフライトでも、地図を見ると通常の感覚とはかなり違う北回りのルート。
北極海方面を通ってヨーロッパへ向かうというだけで、初ヨーロッパの旅がさらに特別なものに感じられました。
ヘルシンキ経由で、ミラノ・マルペンサ空港へ
約12時間の長いフライトを経て、まずはフィンランドのヘルシンキ空港へ到着。

空港の雰囲気もどこか静かで洗練されていて、「ああ、ヨーロッパに来たんだな」と感じます。
そこからさらに乗り継ぎ、イタリア・ミラノのマルペンサ空港へ。

日本からの移動時間は長かったものの、機内から見える景色や、少しずつ変わっていく空港の雰囲気に、疲れよりも好奇心の方が勝っていたように思います。

マルペンサ空港に到着後は、チャーターしたバスでホテルへ移動しました。空港からホテルまでは、およそ1時間ほど。
バスの窓から見える街並みや道路標識、建物の色、車の走り方まで、日本とは全く違っていて、ただ移動しているだけでも目に入るものすべてが新鮮でした。
宿泊先は、味わいのあるリノベーションホテル
今回宿泊したのは、ミラノ郊外にある Starhotels Business Palace(スターホテルズ・ビジネスパレス)というホテルです。

ホテルは市内中心部から少し離れた場所にありますが、徒歩3分ほどのところにミラノ地下鉄(ATM)M3線の Porto Di Mare(ポルト・ディ・マーレ)駅があり、中心部への移動も比較的スムーズでした。

印象的だったのは、ホテルの建物そのものです。
外観や館内の雰囲気からは、古い工場か何かの施設をフルリノベーションしたような趣が感じられました。きれいに整えられていて快適なのですが、どこか新築のホテルとは違う、時間を重ねた建物ならではの味わいがあります。

古い建物を壊して新しくするのではなく、その雰囲気や骨格を活かしながら、現代のホテルとして使いやすく蘇らせる。
そうした感覚に、古いものを大切にしながら今の暮らしを取り入れていく、イタリアらしい文化を感じました。
家具や木工塗装の仕事でも、古くなったものをただ捨てるのではなく、手を入れてもう一度美しく使えるようにすることがあります。
そう考えると、このホテルの佇まいにもどこか共感できるものがあり、旅の拠点としてだけでなく、建物そのものも印象に残る宿泊先でした。
チェックインまでの時間で、さっそくミラノの街へ
ホテルに到着したものの、チェックインまで少し時間がありました。
せっかくミラノまで来たのだから、ただロビーで待っているのはもったいない。
ということで、まずは手始めに周辺を散策してみることにしました。

最寄り駅の Porto Di Mare(ポルト・ディ・マーレ)へ。
まず、切符を買うのも一苦労でした。
日本の電車のように「目的地までいくら」という距離ごとの運賃に慣れていると、ミラノの地下鉄の仕組みは少し戸惑います。ミラノの公共交通機関(ATM)のチケットは、距離というより、最初に有効化してから何分・何時間使えるかという考え方が中心です。
代表的なチケットには、次のようなものがあります。
- 1回券:2.20ユーロ(約400円)
最初の打刻から90分間有効。 - 1日券:7.60ユーロ(約1400円)
最初の打刻から24時間有効で、時間内は乗り放題。 - 3日券:15.50ユーロ(約2800円)
最初の打刻から3日連続で有効。期間中は乗り放題。 - 10回券:19.50ユーロ(約3600円)
90分有効のチケットが10回分。ただし、同じチケットを複数人で同時に使うことはできません。
それでも、一緒に行動させて頂いた手練れの方に教えてもらいながらなんとか購入しました。
日本の交通系ICカードの便利さに慣れている身としては、最初の1枚を買うだけでもちょっとした冒険です。

ここから地下鉄に乗り、10駅目の Repubblica(レプッブリカ)駅へ。
初めてのミラノ地下鉄は、少し緊張しながらも、乗ってしまえば意外とわかりやすく、街へ入っていく実感が一気に湧いてきました。
そして目的地へ到着。

この Repubblica駅周辺では、3つの家具・キッチンブランドのショールームを見学しました。
訪問したのは、LAGO、elmar、Bulthaup の3ブランドです。
LAGO ― 軽やかで、空間に余白をつくる家具
最初に見学したのは LAGO(ラーゴ)。

LAGOは、イタリアのモダン家具ブランドで、住まいだけでなく、ホテル、ワークスペース、レストラン、店舗などにも対応するモジュール家具を展開しています。
公式サイトでも、Made in Italyのモジュール家具を、家庭空間から公共的な場所まで幅広く提案していることが紹介されています。

ショールームで印象的だったのは、家具そのものが主張しすぎず、空間の中に“軽やかに浮いている”ように見えること。

大きな収納やテーブルであっても、重たく見せない工夫が随所にあり、脚元の抜け感や、面の構成、色のトーンの使い方がとても上手でした。

塗装職人の目線で見ると、こうしたシンプルなデザインほど、実は仕上げの粗が隠せません。
面が広く、装飾が少ない家具は、塗装面の均一さ、角の立ち方、エッジの処理、光の反射の仕方がそのまま品質として見えてきます。
「シンプルに見せるためには、細部が相当きちんとしていなければならない」
そんなことを改めて感じさせられるショールームでした。
elmar ― キッチンを“生活の中心”として見せる提案
次に訪れたのは elmar(エルマー)。

elmarは、オーダーメイドのキッチンを中心に、デザイン、技術、素材を組み合わせた Made in Italy のキッチンブランドです。公式サイトでは、使う人の個性を反映したカスタムメイドのキッチン、統合された技術、優れた素材を特徴として紹介しています。

特に印象に残ったのは、キッチンを単なる調理設備としてではなく、暮らしの中心にある家具として見せていたことです。


扉を閉じた時には美しい壁面収納のように見え、開くと内部に機能が現れる。
その切り替わりがとても自然で、生活感を隠すのではなく、デザインとして整えているのように感じました。
elmarの「@Home」というシステムは、2014年のミラノサローネで発表されたもので、従来の柱状収納を同一面の連続したキャビネットに変え、内部をさまざまな機能にカスタマイズできる仕組みとして紹介されています。


塗装職人として気になったのは、素材の切り替え部分です。
木質、金属、石材、塗装面。異なる素材が隣り合うと、どうしても段差や光沢差、見切りの粗さが出やすいものですが、ショールームではその取り合いが非常に美しく見えました。


家具でもキッチンでも、最後に全体の印象を決めるのは、やはり“納まり”なのだと感じます。
Bulthaup ― 引き算の美しさを感じるキッチン
3つ目は Bulthaup(ブルトハウプ)。

Bulthaup はドイツのプレミアムキッチンブランドで、使う人のニーズに合わせたキッチンづくりを特徴としています。公式サイトでは、その特徴をドラマチックに説明されています。


実際に見て感じたのは、とにかく“余計なものがない”ということ。


派手な装飾で目を引くのではなく、線の細さ、面の整い方、素材の質感で勝負している印象でした。

これは塗装の仕事にも通じるところがあります。
綺麗に塗る、艶、色を合わせるという技術はもちろん大切ですが、最終的に「上質だな」と感じるものは、必要以上に語りすぎないものだったりします。

面が静かで、角が整っていて、手触りに違和感がない。
そうゆう当たり前のようで難しいことが、空間全体の品格につながっているのだと感じました。
ミラノの街で食べた、ちょっと高級なパニーニ
ショールームの見学の合間、少し小腹が空いたので、近くのカフェに入りました。
そこで購入したのが、ホットサンドイッチ、いわゆるパニーニです。

お値段は6.5ユーロ。日本円にすると、感覚的には1,200円くらい。
日本のコンビニやカフェの感覚からすると、正直「ちょっと高いな」と思いました。
ところが食べてみると、本格的な生ハムとチーズがしっかりと入っていて、パンも大きく、かなり食べ応えがあります。
街を歩きながらパクつくにはちょうどよく、むしろ「この内容なら納得かも」と感じました。
海外に来ると、こうした何気ない食べ物ひとつででも、その土地の空気を感じられるのが面白いところです。
カフェでさっと買ったパニーニを片手に、ミラノの街を歩く。
それだけで、少しだけ現地の人になったような気分になりました。
街歩きの途中で見た「垂直の森」
Repubblica周辺を歩いていると、遠くにとても印象的な建築が見えました。

それが、ミラノの有名建築 Bosco Verticale(ボスコ・ヴェルティカーレ)。日本語にすると「垂直の森」です。

Bosco Verticale は、ミラノ中心部の Porta Nuova地区に建つ2棟の住宅タワーで、高さは110mと76m。建物のバルコニーには、800本の樹木、4,500本の低木、20,000本の植物が配置されているそうです。
公式情報では、都市の敷地を広げずに自然を高密度に取り込む「都市の森林化」のモデルとして位置づけられ、微粒子やCO2の吸収、酸素の生成、水管理、騒音低減、生活の質の向上などにも寄与すると言われています。
初日の締めくくりは、ホテル近くのピッツァレストランへ
この日は、長い移動のあとにもかかわらず、ホテル到着後すぐに地下鉄に乗り、ショールームを巡り、街を歩き、ミラノの空気をたっぷりと感じる一日となりました。
夕方にはいったんホテルに戻り、夜はホテル近くのピッツァレストランで夕食。
せっかくイタリアに来たのだから、やはり本場のイタリアンを味わいたいところです。
お店ではワインを飲みながら、前菜、肉料理とサラダ、大判のピッツァ、さらには大盛りのパスタまで、これぞイタリアンという料理をお腹いっぱい楽しみました。
移動の疲れもありましたが、美味しい料理とワインで気分もすっかりほぐれ、初日の夜から楽しい食事となりました。
写真を撮り忘れてしまったのが、非常に残念なのですが。
ちなみにお値段は、1人当たり50ユーロほど。日本円にすると約9,000円くらいです。
日本の感覚からすると、やはり少々割高に感じます。カフェで食べたパニーニもそうでしたが、実際に現地で食事をしてみると、イタリアの物価の高さを肌で感じる場面もありました。
とはいえ、本場の雰囲気の中でワインを飲み、前菜からピッツァ、パスタまでしっかり味わえたことを考えると、旅の初日としてはとても贅沢で、印象に残る夕食になりました。
初ヨーロッパ、初ミラノ、そして初日から家具ショールーム巡り。
期待と不安が入り混じって始まった旅でしたが、終わってみれば「これはすごい経験になりそうだ」という予感に変わっていました。
次回、第2部では、いよいよミラノサローネ本会場で見た展示や、世界の家具ブランドの空間づくり、そして塗装職人の目線で感じた素材・色・仕上げについてレポートしていきたいと思います。
~塗装職人が巡る、ミラノサローネ2026視察レポート2 会場編につづく~
・
・
初っ端からかなり長い記事になってしまいましたが・・・
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
次回もお楽しみに
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