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世界の家具づくりに触れる ミラノサローネ2026視察レポート
第3部・本会場2日目と Fuori Salone 編

~前回、塗装職人が巡る、ミラノサローネ2026視察レポート2 会場編からの続き~
前回の第2部では、ミラノサローネ本会場 Fiera Milano Rho を初めて訪れた4月23日の様子をレポートしました。
ホテルでの朝食から始まり、チャーターバスで会場へ向かう道中、Fiera Milano Rho の圧倒的なスケール、そして世界各国の家具ブランドが作り出す展示空間。
初めて見るミラノサローネ本会場は、想像以上の広さと熱気にあふれていました。
今回の第3部では、その翌日、4月24日の会場視察2日目の様子をお届けします。

この日も午前中は Fiera Milano Rho の本会場で、Audo、Sirius、Kartell、RODA、Tacchini、LAGO、VENINI、Gallotti&Radiceなどのブースを見学。
そして午後からは本会場を飛び出し、ミラノ市内で行われている Fuori Salone(フォーリ・サローネ)へ向かいました。
ミラノサローネは、巨大な展示会場だけで完結するイベントではありません。
市内のショールームや歴史的建築、ギャラリー、ポップアップ会場など、ミラノの街全体がデザインの舞台になります。
第3部では、Fiera Milano Rho で見た2日目の展示と、Brera 地区や Montenapoleone 地区で見学した Poliform の展示を中心に、家具塗装職人の目線で感じたことをまとめていきたいと思います。
再びチャーターバスで Fiera Milano Rho へ

この日も、ホテル前からチャーターしたバスに乗り、朝8時半に出発。
前日と同じく、行きのみの送迎で Fiera Milano Rho へ向かいました。
1日目は、会場の大きさや人の多さに圧倒されるばかりでしたが、2日目は少しだけ歩き方にも慣れてきました。

それでも、Fiera Milano Rho はやはり広大です。
歩いても歩いても展示が続き、世界中のブランドがそれぞれの世界観を大きなブースで表現しています。
Audo Copenhagen ― 北欧らしい静けさと素材感

Audo Copenhagen(オード・コペンハーゲン)も、印象的なブランドでした。
Audo Copenhagen は、2023年にMENU、The Audo、by Lassen がひとつになって生まれたブランドで、デンマークデザインの伝統と現代的な視点を併せ持つブランドとして展開されています。

イタリアブランドの華やかさとはまた違い、Audoの展示には北欧らしい静けさがありました。
線は細く、色は穏やかで、素材感も自然体。
派手に目を引くというより、暮らしの中にすっと馴染むような空気感です。

塗装目線で見ると、こうした家具は色のわずかな違いや、艶の抑え方がとても重要になります。
強い主張をしないからこそ、仕上げの質がそのまま空間の心地よさにつながるのだと思いました。
Sirius ― 空気をデザインするキッチンフード
キッチン用レンジフードを中心に展開するイタリアブランド Sirius(シリウス)のブースも見学しました。

Siriusは1996年創業のイタリア企業で、家庭用の換気・空気清浄、特にキッチン用レンジフードを専門にしているブランドです。大量生産的な製品ではなく、デザイン性や細部の品質にこだわったレンジフードづくりを目指してきたメーカーとして紹介されています。
2026年のミラノサローネでは、EuroCucina / FTK - Technology For the Kitchen に出展し、「Where air becomes matter」、つまり「空気がかたちになる場所」のようなコンセプトを掲げていました。Sirius自身も、キッチン空間の中で換気や空気の流れを単なる機能ではなく、デザインの一部として見せる提案をしていたようです。

たとえば、ワークトップに組み込むダウンドラフト型のフードや、調理機器と吸引機能を一体化させた製品など、キッチンをすっきり見せるための工夫が重ねられています。
2011年には、吸引機能をIHクッキングヒーターに統合したモデルを発表しており、調理スペースと換気機能を一体化する考え方を早くから進めてきたことが分かります。

塗装職人の目線で見ると、キッチンまわりの製品はとても興味深い存在です。レンジフードは機能部品でありながら、今のキッチンでは空間全体の印象を左右する“見える設備”でもあります。
金属の質感、塗装面の艶、周囲の面材や天板との組み合わせによって、キッチンの雰囲気は大きく変わります。
Kartell ― プラスチック素材が生む軽やかなデザイン
カラフルな色彩が印象的だったのが、Kartell(カルテル)です。

Kartell は1949年、ジュリオ・カステッリによって創業されたイタリアのデザインブランドです。プラスチック素材を家具やインテリアの世界に取り入れ、イタリアンデザインの可能性を広げてきたブランドとして知られています。


透明感のある椅子や、カラフルで軽やかな家具を見ると、素材そのものをポジティブに楽しんでいる印象を受けます。
木や塗装とはまた違う世界ですが、素材の特性をどう見せるかという点では、塗装の仕事にも通じるものがありました。


アート作品のような家具たちに魅了されました。
RODA ― 屋外空間を上質なリビングにする家具

続いて見学したのが、アウトドア家具ブランドの RODA(ロダ)です。

RODAは、屋外空間を美しく、心地よく使える場所として捉え、高品質なアウトドア家具を展開しているイタリアブランドです。公式サイトでも、庭、テラス、パティオなどを彩るソファ、ラウンジチェア、テーブル、デイベッドなど、幅広い屋外家具を紹介しています。


木部、金属、ファブリック、クッション材。
屋外で使う家具は、紫外線や湿気への耐久性も必要ですが、それでいて見た目の上質さも求められます。
塗装の目線で見ると、屋外家具の仕上げは非常に難しい分野です。
美しさと耐候性、その両方をどう成立させるかという点で、とても興味深い展示でした。
Tacchini ― 職人技と現代のデザインのバランス

Tacchini(タッキーニ)は、イタリア・ブリアンツァ地方のセーヴェゾでアントニオ・タッキーニによって始まった家具ブランドです。創業当初は木工所としてスタートし、その後、Made in Italy を代表する国際的な家具ブランドへと発展してきました。

Tacchini の家具は、柔らかいフォルムや落ち着いた色使いが印象的でした。
奇抜すぎるわけではないのに、しっかりと記憶に残る。その加減がとても上手です。

鏡面仕上げのローボード&テーブル。
そのレベル高さに驚き、その精巧な仕上がりにうっとり。


野趣味溢れる柄の突き板(黒檀?)を用いた鏡面仕上げのテーブルとアフリカの彫刻アートを思わせる椅子との取り合わせが個人的には好きでした。

卓越した木工技術を感じさせるアフリカンな椅子。

鉄板を折曲げて作られたシェルフ。渋いメタリック塗装が施されていた。


塗装職人として見ると、こうした家具は「色の出し方」がとても重要だと感じます。
強い色で主張するのではなく、素材や形に寄り添うような色。
それでいて空間の中で埋もれない色。
その繊細なバランスに、イタリア家具らしい洗練を感じました。
Edra ― 見たかったけれど、長蛇の列で断念
ぜひ見学したかったブランドのひとつが、Edra(エドラ)です。
Edraは1987年、イタリアのトスカーナ州ペリニャーノでヴァレリオ・マッツェイとモニカ・マッツェイによって創業された高級ハイエンド家具ブランドです。

ところが、ブースに着いてみると入口には長蛇の列。
やはり人気ブランドだけあって、多くの来場者が注目していました。
それでも、入口の雰囲気や行列の長さだけでも、Edra というブランドの存在感の大きさを感じることができました。
LAGO ― 街中ショールームに続き、本会場ブースも見学
初日にミラノ市内のショールームを見学して気になっていた LAGO(ラーゴ)も、本会場で改めて見ることができました。

LAGOは1976年にジュゼッペ・ラーゴによって創業されたブランドで、そのルーツは19世紀末の家具職人ポリカルポ・ラーゴにまでさかのぼるとされています。現在はMade in Italyのモジュール家具を、住まいだけでなくホテル、ワークスペース、レストラン、店舗などにも展開しています。

初日に見たショールームでも感じましたが、LAGO の家具はとにかく軽やかです。
キッチンアイランドやベッドといった本来は重く見えやすい家具でも、空間の中に浮いているように見せる工夫があります。

本会場のブースでも、その“軽さ”や“余白”の作り方が印象的でした。

塗装職人の目線で見ると、こうしたシンプルで軽やかな家具ほど、面の美しさやエッジの処理がとても重要になります。
余計な装飾がない分、仕上げの精度がそのまま見えてしまう。
そういう意味でも、とても勉強になるブランドでした。
VENINI ― ガラス工芸の美しさに触れる
家具だけでなく、ガラス工芸のブランド VENINI(ヴェニーニ)も見学しました。

VENINIは1921年、イタリアのムラーノ島でパオロ・ヴェニーニとジャコモ・カッペリンによって創業されたガラスブランドです。最高峰のベネチアングラス(ムラーノガラス)の伝統を受け継ぎながら、デザイン性の高い作品を生み出してきたブランドとして知られています。

VENINIの展示は、家具とはまた違う緊張感がありました。
色の深み、透明感、光の反射、ガラスならではの存在感。
ひとつひとつが工芸品でありながら、空間の中ではアートピースのようにも見えます。
木工塗装でも透明感や奥行きをどう出すかは大切なテーマです。
ガラスとは素材が違いますが、光をどう受け、どう反射させるかという点では、どこか共通する部分があるように感じました。
Gallotti & Radice ― ガラスから広がる、素材の美しい緊張感

2日目に見学したブースの中で、特に素材の組み合わせが印象的だったのが、イタリアの家具ブランドGallotti & Radice(ガロッティ&ラディーチェ)です。

Gallotti & Radice は、1956年にPierangelo Gallotti と Luigi Radice によって創業されたブランドです。
もともとはガラス装飾を専門とする工房として始まり、初期には照明、家具、鏡などを、ひとつひとつ手作業で制作していたと紹介されています。現在も、ガラスを軸にしながら、金属、木、石、ファブリックなどを組み合わせた、エレガントで現代的な家具を展開しています。
2026年はブランドにとって70周年の節目でもあり、ミラノデザインウィークでは「Tales in Glass」という企画も展開され、ガラスという素材を通してブランドの歴史や職人技、現代的な表現を見せていたようです。

実際にブースを見て感じたのは、単に「ガラス家具のブランド」という一言では収まらない、素材同士の組み合わせの美しさでした。





どの家具も派手に主張するというより、落ち着いた色合いの中に、素材の存在感をしっかり感じさせるものばかりでした。

塗装職人の目線で気になったのは、木部や塗装面の艶の抑え方です。
赤いコンソールのように色で印象をつくる家具もあれば、木目を活かした棚やテーブル、マットな黒のフレームなど、素材ごとに艶や質感を細かく変えているように見えました。
木部や塗装面は出しゃばりすぎず、しかし質感でしっかり存在感をだしている。そのバランスがとても上手だと感じました。

家具づくりでは、ひとつの素材をきれいに仕上げることも大切ですが、実際の空間では必ず他の素材と隣り合います。
その時、艶をどう合わせるか、色をどう抑えるか、硬い素材と柔らかい素材をどうつなぐか。
そんなことを改めて考えさせられる、とても見応えのあるブースでした。
会場で食べた、ボリューム満点の「MILANSE」サンド
この日の昼食は、会場内で購入した「MILANSE」というサンドイッチでした。
名前からすると、いわゆるミラノ風のハムカツサンドのようなものだと思います。
大きなハムカツに、たっぷりの野菜が挟まっていて、見た目以上にボリューム満点。
味もとても美味しかった。
お値段はひとつ9ユーロ。
日本円にすると約1600円ほどなので、サンドイッチとしてはなかなか良いお値段です。
それでも、実際に食べてみるとかなり大きく、具材もしっかり入っていて、ひとつで十分お腹いっぱいになりました。
午後は本会場を飛び出して Fuori Salone へ

2日目の午後は、Fiera Milano Rho の本会場を離れ、ミラノ市内で行われている Fuori Salone(フォーリ・サローネ)を見学しました。

前回の記事でも触れましたが、Fuori Salone とは、展示会場の外、つまりミラノ市内各所のショールーム、ギャラリー、歴史的建築、イベントスペースなどで行われる展示のことです。
ミラノサローネ本会場と Fuori Salone を合わせた期間全体が、いわゆるミラノデザインウィークと呼ばれています。

この日も、本会場の最寄り駅 Rho Fieramilano から地下鉄に乗り、Duomo(ドゥオーモ)駅へ移動。

そこからミラノ中心街を散策しながら、まずはBrera地区方面で行われていた Poliform(ポリフォルム)のインスタレーション展示へ向かいました。
Poliform ― 住空間全体を美しく見せるブランド
Poliformは1970年、アルベルト・スピネッリ、アルド・スピネッリ、ジョヴァンニ・アンザーニによって、イタリアのブリアンツァ家具地区で創業された家具ブランドです。
公式サイトでは、職人技、技術的知識、デザインの熟練を背景に、現代的な住空間を提案するブランドとして紹介されています。
Palazzo Clerici でのインスタレーション

Poliformの2026年コレクションは、ミラノデザインウィーク期間中、Palazzo Clerici(パラッツォ・クレリチ宮殿)内で発表されたそうですが(公式サイト参照)、残念ながら、インビテーションがない私たちは宮殿内部には入れず(涙)

しかしながら、パティオにて一般公開されていたインスタレーション作品「MULTITUDE(マルチチュード)」は見ることが出来ました。

会場は、歴史ある建物の雰囲気と Poliform の洗練された家具が見事に調和していて、とても見応えがありました。空間そのものを体験するような展示でした。
Poliformショールームへ

その流れで、Montenapoleone 地区方面にあるPoliformのショールームも見学しました。

こちらは非常に人気があり、入場まで1時間半ほど行列に並ぶことに。
正直、歩き疲れた体にはなかなか大変でしたが、それでも並んだ甲斐がある展示でした。




Poliform Milanoのショールームは、公式にも、Poliformの洗練された現代的なライフスタイルを体感できる場所として紹介されています。フォーマルな美しさ、技術的な革新、上質な素材を組み合わせ、住まい全体に一貫したデザインビジョンを持たせている点が特徴です。




実際に見てみると、家具そのものの美しさはもちろん、空間の作り込みが本当に見事でした。
色のトーン、素材の合わせ方、照明、余白、家具と建築の関係。
どこを見ても完成度が高く、長い行列に並んでも見る価値があったと思いました。


塗装職人として特に気になったのは、素材同士のつながり方です。
木、石、金属、ファブリック、塗装面。
それぞれが主張しすぎず、空間の中で自然に溶け合っていました。

上質な空間では、塗装は目立ちすぎない。
けれど、確実に空間の印象を支えている。
Poliform の展示を見て、そのことを改めて感じました。
2日目の夕食は、ホテル近くの大衆食堂のようなお店へ

Fuori Saloneの見学を終えたあとは、ホテルへ戻り、夜はホテル近くにある L’Agristorante(ラグリストランテ)というレストランで夕食を取りました。

この日は、前日のようなきちんとした夕食会ではなく、日本でいう大衆食堂のような、気軽に入れる雰囲気のお店でした。

※料理の写真は取り忘れてしまいました・・・(涙)
注文したパスタもリゾットも非常に美味しく、写真を撮り忘れてしまったのが残念なくらいでした。
観光客向けの華やかなレストランとはまた違い、現地の人たちの日常の中にあるようなお店で食事ができたのも、とても良い経験でした。
ミラノサローネのような世界的な展示会を見に来ている一方で、こうした日常の食事に触れると、少しだけイタリアの暮らしに近づけたような気がしました。
華やかなデザインの世界と、街の日常の両方を感じられた、充実した2日目となりました。
・
・
気付いたら、本会場2日目のレポートも長くなってしまいましたね。
今回はこの辺にしておきましょうか。
~塗装職人が巡る、ミラノサローネ2026視察レポート4 街中編につづく~
次回の第4部では、翌日の4月25日、そしてミラノ滞在最終日となる4月26日の自由視察の様子をレポートします。
この2日間は、さらにミラノ市内の Fuori Salone へ出掛け、各所ショールームやイベント会場を見学しました。
また、視察の合間にはミラノを代表する建築であるドゥオーモ大聖堂の内部も見学することができました。
そして、最終日にはなんとトラブル発生・・・!?
引き続き、塗装職人の目線で見たミラノのデザインと街の魅力をお届けしたいと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。
次回もお楽しみに!!
●ニシザキ工芸株式会社塗装部HP
https://tosou.nishizaki.co.jp/
●特注家具・ニシザキ工芸株式会社HP
https://www.nishizaki.co.jp/
世界の家具づくりに触れる ミラノサローネ2026視察レポート
第3部・本会場2日目と Fuori Salone 編

~前回、塗装職人が巡る、ミラノサローネ2026視察レポート2 会場編からの続き~
前回の第2部では、ミラノサローネ本会場 Fiera Milano Rho を初めて訪れた4月23日の様子をレポートしました。
ホテルでの朝食から始まり、チャーターバスで会場へ向かう道中、Fiera Milano Rho の圧倒的なスケール、そして世界各国の家具ブランドが作り出す展示空間。
初めて見るミラノサローネ本会場は、想像以上の広さと熱気にあふれていました。
今回の第3部では、その翌日、4月24日の会場視察2日目の様子をお届けします。

この日も午前中は Fiera Milano Rho の本会場で、Audo、Sirius、Kartell、RODA、Tacchini、LAGO、VENINI、Gallotti&Radiceなどのブースを見学。
そして午後からは本会場を飛び出し、ミラノ市内で行われている Fuori Salone(フォーリ・サローネ)へ向かいました。
ミラノサローネは、巨大な展示会場だけで完結するイベントではありません。
市内のショールームや歴史的建築、ギャラリー、ポップアップ会場など、ミラノの街全体がデザインの舞台になります。
第3部では、Fiera Milano Rho で見た2日目の展示と、Brera 地区や Montenapoleone 地区で見学した Poliform の展示を中心に、家具塗装職人の目線で感じたことをまとめていきたいと思います。
再びチャーターバスで Fiera Milano Rho へ

この日も、ホテル前からチャーターしたバスに乗り、朝8時半に出発。
前日と同じく、行きのみの送迎で Fiera Milano Rho へ向かいました。
1日目は、会場の大きさや人の多さに圧倒されるばかりでしたが、2日目は少しだけ歩き方にも慣れてきました。

それでも、Fiera Milano Rho はやはり広大です。
歩いても歩いても展示が続き、世界中のブランドがそれぞれの世界観を大きなブースで表現しています。
Audo Copenhagen ― 北欧らしい静けさと素材感

Audo Copenhagen(オード・コペンハーゲン)も、印象的なブランドでした。
Audo Copenhagen は、2023年にMENU、The Audo、by Lassen がひとつになって生まれたブランドで、デンマークデザインの伝統と現代的な視点を併せ持つブランドとして展開されています。

イタリアブランドの華やかさとはまた違い、Audoの展示には北欧らしい静けさがありました。
線は細く、色は穏やかで、素材感も自然体。
派手に目を引くというより、暮らしの中にすっと馴染むような空気感です。

塗装目線で見ると、こうした家具は色のわずかな違いや、艶の抑え方がとても重要になります。
強い主張をしないからこそ、仕上げの質がそのまま空間の心地よさにつながるのだと思いました。
Sirius ― 空気をデザインするキッチンフード
キッチン用レンジフードを中心に展開するイタリアブランド Sirius(シリウス)のブースも見学しました。

Siriusは1996年創業のイタリア企業で、家庭用の換気・空気清浄、特にキッチン用レンジフードを専門にしているブランドです。大量生産的な製品ではなく、デザイン性や細部の品質にこだわったレンジフードづくりを目指してきたメーカーとして紹介されています。
2026年のミラノサローネでは、EuroCucina / FTK - Technology For the Kitchen に出展し、「Where air becomes matter」、つまり「空気がかたちになる場所」のようなコンセプトを掲げていました。Sirius自身も、キッチン空間の中で換気や空気の流れを単なる機能ではなく、デザインの一部として見せる提案をしていたようです。

たとえば、ワークトップに組み込むダウンドラフト型のフードや、調理機器と吸引機能を一体化させた製品など、キッチンをすっきり見せるための工夫が重ねられています。
2011年には、吸引機能をIHクッキングヒーターに統合したモデルを発表しており、調理スペースと換気機能を一体化する考え方を早くから進めてきたことが分かります。

塗装職人の目線で見ると、キッチンまわりの製品はとても興味深い存在です。レンジフードは機能部品でありながら、今のキッチンでは空間全体の印象を左右する“見える設備”でもあります。
金属の質感、塗装面の艶、周囲の面材や天板との組み合わせによって、キッチンの雰囲気は大きく変わります。
Kartell ― プラスチック素材が生む軽やかなデザイン
カラフルな色彩が印象的だったのが、Kartell(カルテル)です。

Kartell は1949年、ジュリオ・カステッリによって創業されたイタリアのデザインブランドです。プラスチック素材を家具やインテリアの世界に取り入れ、イタリアンデザインの可能性を広げてきたブランドとして知られています。


透明感のある椅子や、カラフルで軽やかな家具を見ると、素材そのものをポジティブに楽しんでいる印象を受けます。
木や塗装とはまた違う世界ですが、素材の特性をどう見せるかという点では、塗装の仕事にも通じるものがありました。


アート作品のような家具たちに魅了されました。
RODA ― 屋外空間を上質なリビングにする家具

続いて見学したのが、アウトドア家具ブランドの RODA(ロダ)です。

RODAは、屋外空間を美しく、心地よく使える場所として捉え、高品質なアウトドア家具を展開しているイタリアブランドです。公式サイトでも、庭、テラス、パティオなどを彩るソファ、ラウンジチェア、テーブル、デイベッドなど、幅広い屋外家具を紹介しています。


木部、金属、ファブリック、クッション材。
屋外で使う家具は、紫外線や湿気への耐久性も必要ですが、それでいて見た目の上質さも求められます。
塗装の目線で見ると、屋外家具の仕上げは非常に難しい分野です。
美しさと耐候性、その両方をどう成立させるかという点で、とても興味深い展示でした。
Tacchini ― 職人技と現代のデザインのバランス

Tacchini(タッキーニ)は、イタリア・ブリアンツァ地方のセーヴェゾでアントニオ・タッキーニによって始まった家具ブランドです。創業当初は木工所としてスタートし、その後、Made in Italy を代表する国際的な家具ブランドへと発展してきました。

Tacchini の家具は、柔らかいフォルムや落ち着いた色使いが印象的でした。
奇抜すぎるわけではないのに、しっかりと記憶に残る。その加減がとても上手です。

鏡面仕上げのローボード&テーブル。
そのレベル高さに驚き、その精巧な仕上がりにうっとり。


野趣味溢れる柄の突き板(黒檀?)を用いた鏡面仕上げのテーブルとアフリカの彫刻アートを思わせる椅子との取り合わせが個人的には好きでした。

卓越した木工技術を感じさせるアフリカンな椅子。

鉄板を折曲げて作られたシェルフ。渋いメタリック塗装が施されていた。


塗装職人として見ると、こうした家具は「色の出し方」がとても重要だと感じます。
強い色で主張するのではなく、素材や形に寄り添うような色。
それでいて空間の中で埋もれない色。
その繊細なバランスに、イタリア家具らしい洗練を感じました。
Edra ― 見たかったけれど、長蛇の列で断念
ぜひ見学したかったブランドのひとつが、Edra(エドラ)です。
Edraは1987年、イタリアのトスカーナ州ペリニャーノでヴァレリオ・マッツェイとモニカ・マッツェイによって創業された高級ハイエンド家具ブランドです。

ところが、ブースに着いてみると入口には長蛇の列。
やはり人気ブランドだけあって、多くの来場者が注目していました。
それでも、入口の雰囲気や行列の長さだけでも、Edra というブランドの存在感の大きさを感じることができました。
LAGO ― 街中ショールームに続き、本会場ブースも見学
初日にミラノ市内のショールームを見学して気になっていた LAGO(ラーゴ)も、本会場で改めて見ることができました。

LAGOは1976年にジュゼッペ・ラーゴによって創業されたブランドで、そのルーツは19世紀末の家具職人ポリカルポ・ラーゴにまでさかのぼるとされています。現在はMade in Italyのモジュール家具を、住まいだけでなくホテル、ワークスペース、レストラン、店舗などにも展開しています。


初日に見たショールームでも感じましたが、LAGO の家具はとにかく軽やかです。
キッチンアイランドやベッドといった本来は重く見えやすい家具でも、空間の中に浮いているように見せる工夫があります。

本会場のブースでも、その“軽さ”や“余白”の作り方が印象的でした。

塗装職人の目線で見ると、こうしたシンプルで軽やかな家具ほど、面の美しさやエッジの処理がとても重要になります。
余計な装飾がない分、仕上げの精度がそのまま見えてしまう。
そういう意味でも、とても勉強になるブランドでした。
VENINI ― ガラス工芸の美しさに触れる
家具だけでなく、ガラス工芸のブランド VENINI(ヴェニーニ)も見学しました。

VENINIは1921年、イタリアのムラーノ島でパオロ・ヴェニーニとジャコモ・カッペリンによって創業されたガラスブランドです。最高峰のベネチアングラス(ムラーノガラス)の伝統を受け継ぎながら、デザイン性の高い作品を生み出してきたブランドとして知られています。

VENINIの展示は、家具とはまた違う緊張感がありました。
色の深み、透明感、光の反射、ガラスならではの存在感。
ひとつひとつが工芸品でありながら、空間の中ではアートピースのようにも見えます。

木工塗装でも透明感や奥行きをどう出すかは大切なテーマです。
ガラスとは素材が違いますが、光をどう受け、どう反射させるかという点では、どこか共通する部分があるように感じました。
Gallotti & Radice ― ガラスから広がる、素材の美しい緊張感

2日目に見学したブースの中で、特に素材の組み合わせが印象的だったのが、イタリアの家具ブランドGallotti & Radice(ガロッティ&ラディーチェ)です。

Gallotti & Radice は、1956年にPierangelo Gallotti と Luigi Radice によって創業されたブランドです。
もともとはガラス装飾を専門とする工房として始まり、初期には照明、家具、鏡などを、ひとつひとつ手作業で制作していたと紹介されています。現在も、ガラスを軸にしながら、金属、木、石、ファブリックなどを組み合わせた、エレガントで現代的な家具を展開しています。
2026年はブランドにとって70周年の節目でもあり、ミラノデザインウィークでは「Tales in Glass」という企画も展開され、ガラスという素材を通してブランドの歴史や職人技、現代的な表現を見せていたようです。

実際にブースを見て感じたのは、単に「ガラス家具のブランド」という一言では収まらない、素材同士の組み合わせの美しさでした。





どの家具も派手に主張するというより、落ち着いた色合いの中に、素材の存在感をしっかり感じさせるものばかりでした。

塗装職人の目線で気になったのは、木部や塗装面の艶の抑え方です。
赤いコンソールのように色で印象をつくる家具もあれば、木目を活かした棚やテーブル、マットな黒のフレームなど、素材ごとに艶や質感を細かく変えているように見えました。
木部や塗装面は出しゃばりすぎず、しかし質感でしっかり存在感をだしている。そのバランスがとても上手だと感じました。

家具づくりでは、ひとつの素材をきれいに仕上げることも大切ですが、実際の空間では必ず他の素材と隣り合います。
その時、艶をどう合わせるか、色をどう抑えるか、硬い素材と柔らかい素材をどうつなぐか。
そんなことを改めて考えさせられる、とても見応えのあるブースでした。
会場で食べた、ボリューム満点の「MILANSE」サンド
この日の昼食は、会場内で購入した「MILANSE」というサンドイッチでした。

名前からすると、いわゆるミラノ風のハムカツサンドのようなものだと思います。
大きなハムカツに、たっぷりの野菜が挟まっていて、見た目以上にボリューム満点。
味もとても美味しかった。
お値段はひとつ9ユーロ。
日本円にすると約1600円ほどなので、サンドイッチとしてはなかなか良いお値段です。
それでも、実際に食べてみるとかなり大きく、具材もしっかり入っていて、ひとつで十分お腹いっぱいになりました。
午後は本会場を飛び出して Fuori Salone へ

2日目の午後は、Fiera Milano Rho の本会場を離れ、ミラノ市内で行われている Fuori Salone(フォーリ・サローネ)を見学しました。

前回の記事でも触れましたが、Fuori Salone とは、展示会場の外、つまりミラノ市内各所のショールーム、ギャラリー、歴史的建築、イベントスペースなどで行われる展示のことです。
ミラノサローネ本会場と Fuori Salone を合わせた期間全体が、いわゆるミラノデザインウィークと呼ばれています。

この日も、本会場の最寄り駅 Rho Fieramilano から地下鉄に乗り、Duomo(ドゥオーモ)駅へ移動。

そこからミラノ中心街を散策しながら、まずはBrera地区方面で行われていた Poliform(ポリフォルム)のインスタレーション展示へ向かいました。
Poliform ― 住空間全体を美しく見せるブランド
Poliformは1970年、アルベルト・スピネッリ、アルド・スピネッリ、ジョヴァンニ・アンザーニによって、イタリアのブリアンツァ家具地区で創業された家具ブランドです。
公式サイトでは、職人技、技術的知識、デザインの熟練を背景に、現代的な住空間を提案するブランドとして紹介されています。
Palazzo Clerici でのインスタレーション

Poliformの2026年コレクションは、ミラノデザインウィーク期間中、Palazzo Clerici(パラッツォ・クレリチ宮殿)内で発表されたそうですが(公式サイト参照)、残念ながら、インビテーションがない私たちは宮殿内部には入れず(涙)

しかしながら、パティオにて一般公開されていたインスタレーション作品「MULTITUDE(マルチチュード)」は見ることが出来ました。

会場は、歴史ある建物の雰囲気と Poliform の洗練された家具が見事に調和していて、とても見応えがありました。空間そのものを体験するような展示でした。
Poliformショールームへ

その流れで、Montenapoleone 地区方面にあるPoliformのショールームも見学しました。

こちらは非常に人気があり、入場まで1時間半ほど行列に並ぶことに。
正直、歩き疲れた体にはなかなか大変でしたが、それでも並んだ甲斐がある展示でした。




Poliform Milanoのショールームは、公式にも、Poliformの洗練された現代的なライフスタイルを体感できる場所として紹介されています。フォーマルな美しさ、技術的な革新、上質な素材を組み合わせ、住まい全体に一貫したデザインビジョンを持たせている点が特徴です。




実際に見てみると、家具そのものの美しさはもちろん、空間の作り込みが本当に見事でした。
色のトーン、素材の合わせ方、照明、余白、家具と建築の関係。
どこを見ても完成度が高く、長い行列に並んでも見る価値があったと思いました。


塗装職人として特に気になったのは、素材同士のつながり方です。
木、石、金属、ファブリック、塗装面。
それぞれが主張しすぎず、空間の中で自然に溶け合っていました。

上質な空間では、塗装は目立ちすぎない。
けれど、確実に空間の印象を支えている。
Poliform の展示を見て、そのことを改めて感じました。
2日目の夕食は、ホテル近くの大衆食堂のようなお店へ

Fuori Saloneの見学を終えたあとは、ホテルへ戻り、夜はホテル近くにある L’Agristorante(ラグリストランテ)というレストランで夕食を取りました。

この日は、前日のようなきちんとした夕食会ではなく、日本でいう大衆食堂のような、気軽に入れる雰囲気のお店でした。

※料理の写真は取り忘れてしまいました・・・(涙)
注文したパスタもリゾットも非常に美味しく、写真を撮り忘れてしまったのが残念なくらいでした。
観光客向けの華やかなレストランとはまた違い、現地の人たちの日常の中にあるようなお店で食事ができたのも、とても良い経験でした。
ミラノサローネのような世界的な展示会を見に来ている一方で、こうした日常の食事に触れると、少しだけイタリアの暮らしに近づけたような気がしました。
華やかなデザインの世界と、街の日常の両方を感じられた、充実した2日目となりました。
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気付いたら、本会場2日目のレポートも長くなってしまいましたね。
今回はこの辺にしておきましょうか。
~塗装職人が巡る、ミラノサローネ2026視察レポート4 街中編につづく~
次回の第4部では、翌日の4月25日、そしてミラノ滞在最終日となる4月26日の自由視察の様子をレポートします。
この2日間は、さらにミラノ市内の Fuori Salone へ出掛け、各所ショールームやイベント会場を見学しました。
また、視察の合間にはミラノを代表する建築であるドゥオーモ大聖堂の内部も見学することができました。
そして、最終日にはなんとトラブル発生・・・!?
引き続き、塗装職人の目線で見たミラノのデザインと街の魅力をお届けしたいと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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