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塗装職人が巡る ミラノサローネ2026視察レポート第5部
最終回・自由視察最終日、まさかの腹痛から始まる一日

~前回、塗装職人が巡る、ミラノサローネ2026視察レポート4 街中編からの続き~
これまで4回にわたってお届けしてきた、ミラノサローネ2026視察レポート。
いよいよ今回が最終回となります。
前回の第4部では、4月25日の自由視察として、Duomo周辺の街歩き、安多化粧合板さんの展示、HENRY TIMI、Duomo大聖堂、DAIKANさん、Snaidero、RH など、ミラノ市内を一日かけて歩き回った様子をレポートしました。
今回の第5部では、ミラノ滞在最終日となる4月26日の自由視察の様子をお届けします。
・・・と、いつものように元気よく書き出したいところなのですが、この日は朝から、まさかのトラブルが発生しました。
朝から突然の腹痛に見舞われる
4月26日の朝。
目が覚めると、強烈な腹痛に襲われていました。

最初は「少しお腹の調子が悪いのかな」くらいに思ったのですが、すぐにそんな軽いものではないと分かりました。
起き上がろうとしても、思うように体が動かない。
冷や汗が出て、ベッドから出ることすらままならない状態です。
私は普段、胃腸の丈夫さにはわりと自信がある方です。
日本にいる時も、めったに腹痛など起こさないタイプなので、突然の強い腹痛には本当に驚きました。
しかも、ここは日本ではなく、イタリア・ミラノ。
言葉も病院の仕組みもよく分からない海外で、体調を崩すというのは、想像以上に不安なものです。
この日は完全単独行動の予定でした
これまでのミラノ滞在中は、ツアーで知り合った方々と一緒に行動することが多くありました。
本会場の視察も、街中のFuori Salone巡りも、いろいろな方と一緒に歩きながら、情報を交換したり、感想を話したりする時間がとても楽しいものでした。
しかし、この4月26日だけは、完全に単独行動をするつもりでいました。
前日まで一緒に行動していた方々にも、「明日は一人で自由に回ってみます」と伝えてありました。
一人でミラノの街を歩き、気になる展示やショールームを自分のペースで見て回る。
そうゆう時間も、この視察旅行の最後にぜひ経験してみたいと思っていたのです。
ところが、その朝に限ってこの腹痛。
よりによって、最後の自由視察の日にこんなことになるとは思ってもいませんでした。
頭をよぎる最悪のシナリオ
冷や汗をかきながらベッドで横になっていると、いろいろな不安が頭の中をぐるぐる巡り始めました。

「このまま動けずに、今日一日をムダにしてしまうのだろうか」
「明日は帰国日で、早朝からマルペンサ空港に向かわなければいけないのに、それまでに体調は回復してくれるのだろうか」
「もしこのまま悪化して、イタリアで入院なんてことになったらどうしよう」
考えれば考えるほど、不安ばかりが大きくなっていきます。
今回のミラノサローネ視察旅行は、会社に貴重な機会をいただいて参加させていただいたものです。
渡航費をはじめ、さまざまな面で工面していただき、送り出していただきました。
それなのに、最終日に体調を崩して動けないとなると、本当に申し訳ない気持ちになります。
せっかくここまで来たのに、最後の日を何も見られずに終えるのかと思うと、悔しさも込み上げてきました。
とはいえ、体が思うように動かない以上、どうすることもできません。
連絡するべきか、少し様子を見るべきか
このまま動けないようなら、ホテルの方や、今回の旅行を企画してくださったハーフェレージャパンのスタッフさんに連絡するべきかもしれない。
そう思いました。
ただ一方で、あまり大騒ぎにもしたくないという気持ちもありました。
少し休めば回復するのか、それともすぐに助けを求めた方がよいのか。
海外で体調を崩すと、その判断もなかなか難しいものです。
そんな中で、ふと思い出したのが、日本から持ってきていた胃腸薬と痛み止めでした。
「そういえば、念のために薬を持ってきていたはずだ」
スーツケースの中を確認し、持参していた薬を取り出しました。
とにかく今できることをしようと思い、胃腸薬と痛み止めを服用し、そのままベッドでじっと横になりました。
昼前には、どうにか動ける状態に
薬を飲んでしばらく横になっていると、少しずつ痛みが落ち着いてきました。
もちろん、すぐに完全回復というわけではありません。
体にはまだだるさが残っていましたし、朝の腹痛の恐怖もあり、無理はできない状態です。
それでも、運良く昼前にはどうにか起き上がれるくらいまで回復してきました。
あれほど動けなかった朝の状態を思うと、少し動けるようになっただけでも本当にありがたく感じました。
寝汗で体はびっしょり。
まずはシャワーを浴び、汗を流し、着替えて気持ちを整えました。

鏡を見ると、まだ少し疲れた顔をしていましたが、じっとホテルにいるよりは、無理のない範囲で外に出てみようという気持ちになってきました。
午後から、最後の Fuori Salone へ
本来であれば、朝から出発して一日かけて回る予定だった最終日の自由視察。
しかし、午前中は完全に体調回復にあてることになりました。
予定通りにはいきませんでしたが、それでも午後から少しでも見に行けるなら、行ってみよう。
そう思い、荷物を整えてホテルを出ました。
ミラノ滞在最後の一日。
しかも翌日は早朝からマルペンサ空港へ向かい、日本へ帰国する予定です。
残された時間は限られています。
体調に不安はありましたが、それでも「このまま何も見ずに終わりたくない」という気持ちが勝りました。
こうして、まさかの腹痛から始まったミラノ滞在最終日は、午後からようやく再スタートすることになりました。
ここからは、最後の Fuori Salone 見学へ。
体調と相談しながら、ミラノの街にもう一度出掛けていきました。
最寄り駅から、再び Duomo 駅へ
そして、最寄り駅の Porto di Mare(ポート・ディ・マーレ)駅へ向かいました。
この日は、前日まで一緒に行動していた皆さんとは別れて、完全に一人での自由視察です。
体調にはまだ少し不安がありましたが、無理をしない範囲で、最後のミラノの街を見て回ることにしました。

地下鉄に乗り、昨日と同じく Duomo(ドゥオーモ)駅へ。
ミラノ滞在5日目、こちらの駅も移動の際は毎回利用して、最初に来た時よりも少しだけ慣れてきた気がしました。


Duomo 駅を降りた私は、まず Brera(ブレラ)地区 を目指すことにしました。
ブレラ地区には多くの家具ショールームやギャラリーが点在していて、ミラノデザインウィーク期間中は街全体がデザインイベント会場のようになります。
これまでの街歩きでも比較的歩き慣れていたエリアだったので、体調が万全ではないこの日には、ちょうどよい目的地でした。
Duomo から Brera へ、ミラノの街並みを味わいながら
Duomo 駅を降りて Brera 地区へ向かう道のりも、ただの移動時間ではありませんでした。
ドゥオーモ大聖堂周辺の華やかな雰囲気から少しずつ離れていくと、石造りの建物が並ぶ通りや、歴史を感じるファサード、細い路地、ショーウィンドウの美しいお店など、ミラノらしい街並みが次々と現れてきます。


日本の街歩きとは違い、建物ひとつひとつに長い時間を重ねてきたような重みがあり、何気ない通りの風景にも絵になる美しさがあります。
壁の色、窓枠の形、バルコニーの装飾、路面の石畳。
そうした細かな部分を見ているだけでも、ミラノという街そのものが大きなデザイン展示のように感じられました。

この日は朝から体調を崩していたこともあり、無理をせずゆっくり歩きましたが、その分、普段なら見過ごしてしまいそうな街の表情をじっくり味わうことができたように思います。
Brera 地区へ向かう道中から、すでに Fuori Salone の楽しさは始まっていました。
ブレラ地区とはどんな場所か

ブレラ地区は、ミラノ中心部にある歴史と芸術、デザインが混じり合ったエリアです。
石畳の細い道、古い建物、ギャラリー、ブティック、カフェ、家具ショールームなどが並び、ミラノの中でも特に感度の高い雰囲気を感じる場所でした。

日本の街に例えるなら、青山・表参道のようなデザイン性の高さに、代官山や神楽坂のような落ち着いた路地の雰囲気が少し混ざったような印象でしょうか。

ショールームを目指して歩いている途中にも気になる建物や看板、ウィンドウディスプレイが次々と目に入り、なかなかまっすぐ目的地にたどり着けません。
この“寄り道したくなる感じ”こそ、Fuori Salone の楽しさなのかもしれません。
Boffi/DePadova ― 歴史ある建築と現代デザインが響き合う空間
最初に訪れたのは、Boffi/DePadova(ボッフィ/デパドヴァ)のショールームです。
Boffi は、イタリアを代表する高級キッチン・バスルームブランドのひとつです。
1934年にイタリア北部で始まり、キッチン、バスルーム、収納システムなどを中心に、建築と家具の境界をまたぐような上質な住空間を提案してきたブランドです。

一方の DePadova は、1950年代に Fernando De Padova と Maddalena De Padova によって始まったブランドで、北欧家具やアメリアのモダンデザインをイタリアに紹介し、その後はイタリアらしい洗練された家具ブランドとして発展してきました。

現在は、Boffi、DePadova、ADL などが一体となり、キッチン、バスルーム、収納、家具、間仕切りなどを含めた、住空間全体を提案するブランドグループとなっています。

実際に中へ入ってみると、まず目を引かれたのは、展示されている家具だけでなく、歴史を感じさせる建物そのものの美しさでした。古いミラノの建築が持つ重厚な雰囲気の中に、現代的なキッチンや家具が静かに溶け込み、建築とインテリアがお互いに魅力を引き立て合っていました。


キッチンは非常にミニマルで、面材や天板、収納の納まりが美しく、余計なものがほとんど見えません。バスルームの展示も、単なる設備としてではなく、家具や建築の一部として構成されており、素材の使い方、照明、壁面の仕上げまで、すべてが緻密に計算されているように感じました。


今回巡った数多くのショールームの中でも、Boffi/DePadova は個人的に心を動かされた場所のひとつです。
一つひとつの家具が美しいだけでなく、それらをどのような空間に置き、どんな光の中で見せるのかまで含めて、ブランドの世界観が完成していました。


派手な装飾で目を引くのではなく、素材の質感や納まりの美しさ、空間に流れる静かな緊張感によって上質さを感じさせる。
その完成度の高さには深く感銘を受け、時間が許すなら、もっと長くその場に留まって見ていたいと思うほどでした。


塗装職人の目線で見ても、木、石、金属、ガラス、塗装面の艶や質感が見事に調和していました。
仕上げが全面に出て主張するのではなく、空間全体の美しさを静かに支えている。その姿に、上質なものづくりの一つの理想を見たような気がしました。

後ろ髪を引かれる思いですが・・・時間もないので次にいってみましょう。
TIME & STYLE ― ミラノで出会った、日本のものづくり
次に訪れたのは、TIME & STYLE(タイムアンドスタイル)のショールームです。


TIME & STYLE は、東京を拠点とする日本の家具ブランドです。家具、照明、テーブルウェア、漆器など、暮らしに関わる道具をデザイン・製作しており、伝統的な日本の技術を現代の暮らしに合わせて発展させることを大切にしているブランドです。
ブレラ地区にあるミラノのショールームは、1800年代に建てられた美しい新古典主義の建物の中にあり、同じ建物内に複数のショールームが展開されています。TIME & STYLEさんのショールームは、隣接する2箇所の空間を回ることができました。

中に入って、まずホッとしたのは、日本語で普通に会話できたことです。
体調不良からの単独行動で少し心細さもあったので、遠いミラノの街中で日本語が通じるというだけで、かなり安心しました。


展示されている家具は、イタリアの家具とはまた違う、静かで落ち着いた佇まいがありました。
和を意識したデザイン、控えめな線、木の表情を活かした仕上げ。

昔ながらの日本の木工技術を思わせる家具も多く、どこか懐かしさを感じさせる空間でした。

↑畳ベッド?が居心地良さそうでした。


特に木部の仕上げには、日本の家具らしい繊細さを感じました。
大きく主張するのではなく、素材の手触りや細部の納まりで良さを伝える。
そうした姿勢は、普段の木工塗装の仕事にも通じるものがあります。



ミラノという世界的なデザイン都市で、日本のブランドがしっかりとショールームを構え、海外の方々に向けて日本のものづくりを発信している。
その光景を見て、同じ日本で家具に関わる者として、とても誇らしい気持ちになりました。
ジェラートで少し元気を取り戻す
ショールームをいくつか回っているうちに、少し疲れも出てきました。
この日は朝から腹痛で体力を消耗していたこともあり、無理は禁物です。
そんな時、通り沿いに賑わっているジェラート屋さんを見つけました。
店名は分からなかったのですが、人気のお店のようで、店の前には多くの人が集まっていました。

せっかくなので私もジェラートを購入し、路上で食べることに。
やはり本場イタリアのジェラートは美味しいです。
冷たくて甘いジェラートを食べていると、朝の体調不良で沈んでいた気持ちも少しずつ回復してきました。
街角で見つけた、高島屋さんと龍村美術織物さんの展示

ブレラ地区を歩いていると、街角で見覚えのある名前を見つけました。
日本の百貨店 高島屋 さんの出展です。

高島屋さんと龍村美術織物さんは、ミラノデザインウィーク2026の Fuori Salone に共同出展し、「CASA TATSUMURA(カーサ タツムラ)」というインテリアコレクションを発表していました。


展示では、日本の美術織物が、家具やインテリアとして新しい形で見せられていました。
織物というと、どうしても和装や茶道具などのイメージが強いかもしれませんが、実際に空間の中で見ると、壁面や家具、ファブリックとしても非常に存在感があります。


木工塗装の仕事でも、木目や色、艶、手触りといった表面の表情を大切にします。
龍村美術織物さんの展示では、織物ならではの色の深み、糸の立体感、光の受け方が印象的でした。
素材は違っても、表面の美しさが空間全体の印象を大きく左右するという点では、塗装にも通じるものを感じました。
ミラノの街角で、日本の伝統的かつ卓越した技の織物が現代のインテリアとして発信されている。
これもまた、とても誇らしい光景でした。
ミラノで見つけたラーメン屋「KYOTO RAMEN 匠」


海外で日本語の看板やラーメンの文字を見ると、それだけでつい足を止めてしまいます。
メニューを見るとラーメン一杯が 15ユーロ ほど。日本円にすると約2,800円くらいです。

各種ラーメンとご飯物が、おそらくオール15ユーロって感じですかね!?
日本の感覚からすると、ラーメン一杯としてはかなり高級です。
それでも地元の人たちでお店は賑わっていましたから、現地の物価感覚すると大衆的なお値段なのかもしれませんね。

店頭には、こんなラーメンのイラストも掲げられていました。
丼の中にはチャーシューや煮卵、海苔に加えて、なぜかかわいい海老の天ぷら2本も(笑)
招き猫、日本語っぽい適当な模様が描いてある提灯、いかにも“日本らしさ全部入り”といった感じ。
見るからに AI に描いてもらった感のある!?、楽しいイラストでした。
この日は体調のこともあり、実際に食べることはしませんでしたが、ミラノの街中で日本のラーメン文化がしっかり受け入れられている様子を見ることができたのは面白かったです。
Valcucine ― サステナブルなキッチンデザイン
次に訪れたのは、Valcucine(ヴァルクッチーネ)のショールームです。


Valcucine は、1980年にイタリアで創業したキッチンブランドです。
デザイン性の高さだけでなく、サステナビリティや環境配慮をブランドの大きな軸にしているのが特徴です。
公式情報でも、40年以上にわたり、ウェルビーイング、革新性、時代を越えるデザインを大切にしながら、サステナブルなキッチンづくりに取り組んできたブランドとして紹介されています。
実際に展示されていたキッチンで印象的だったのは、収納を開いた時に現れる大きな開口部です。


普段は薄くフラットな扉によって、調理器具や棚、シンクまわりをすっきりと隠しておくことができます。ところが扉を大きく開くと、内部全体が一気に見渡せる作業空間へと変わります。仕舞ったものが一目で分かり、調理中の動作を妨げない、非常に開放的なつくりだと感じました。



機能がたくさん詰め込まれているにもかかわらず、扉を閉じた時には凸凹や取っ手がほとんど見えず、ひとつの大きな面のように見えるのも特徴的です。
キッチンというより、壁面に置かれたミニマルな家具や、ひとつの建築のような佇まいがありました。


また黒や白、木材、金属、ガラス、石といった素材を使いながら、全体を極力シンプルにまとめているため、どの展示も非常にアート性が高く感じられました。



鮮やかな色の天板、幾何学模様を取り入れた面材なども、単なるキッチン設備を超えて、空間そのものを演出する作品のようでした。



塗装職人の目線で見ると、これだけ面を大きく、装飾を少なく見せるデザインは、仕上げの精度がそのまま品質として表れます。
扉同士の隙間、面の平滑さ、艶の揃い方、異なる素材との境目など、ごまかしきれない細部がとても美しく納められていました。
必要な機能はしっかりと備えながら、使わない時には静かに姿を消す。
Valcucine の展示からは、機能性とミニマムな美しさを両立させる、イタリアらしい洗練されたキッチンデザインを感じました。
イタリアのトイレ事情と、人の優しさ
この日の自由視察で、個人的にかなり切実だったのがトイレ事情です。
朝から腹痛に見舞われたこともあり、この日はとにかくトイレが近くて大変でした。
日本にいると、駅、コンビニ、商業施設、公園など、比較的どこでも気軽にトイレを見つけることができます。
しかしイタリアでは、日本と同じ感覚ではいきません。

公衆トイレの数はそれほど多くなく、地下鉄の駅にもトイレがないことがあります。
あったとしても有料だったり、場所が分かりにくかったりします。
体調が万全でない時には、これがなかなかの不安材料でした。
ちなみに、イタリア語でトイレは Bagno(バーニョ)と言います。
「トイレはどこですが?」は、Dov'e il bagno?(ドヴェ イル バーニョ?)と聞くそうです。
この日は、まさにこの言葉を覚えておいてよかったと感じる場面が何度もありました。

有り難かったのは、ショールームや街のカフェでお願いすると、意外にも快くトイレを使わせてもらえたことです。
もちろんお店や状況にもよると思いますが、困っているこちらの様子を察してくれたのか、とても親切に対応してくださる方が多く、本当に助かりました。
体調不良という意味では大変な一日でしたが、そのおかげでイタリアの方々の優しさに触れることができたのも、忘れられない思い出になりました。
FLEXFORM ― 控えめな上質さを感じる家具
次に見学したのは、FLEXFORM(フレックスフォルム)です。

FLEXFORM は、1959年にイタリア北部のブリアンツァ家具産地で、Galimberti 兄弟によって始まった家具ブランドです。
現在も家族経営の背景を持ち、ソファやアームチェアを中心に、上質で落ち着いたリビング空間を提案しています。


FLEXFORM の家具は、強く主張するというより、控えめでありながら確かな上質さがある印象でした。
大きなソファも、ただ豪華に見せるのではなく、座り心地やプロポーション、張地の質感で品の良さを感じさせます。




公式サイトにも、FLEXFORM はソファを中核としながら、リビング、ダイニング、ベッドルームまで幅広い家具を展開するブランドとして紹介されています。
「派手なラグジュアリー」ではなく、「さりげない高級感」という言葉が似合うブランドだと思いました。


塗装職人として見ても、こうした落ち着いた空間では、木部や金属、張地、塗装面がそれぞれ出過ぎず、全体の空気を整えることが大切だと感じます。
色や艶で目立たせるのではなく、触れた時、座った時、空間に身を置いた時にじわじわと良さが伝わる。
FLEXFORM の展示には、そんな大人の上質さがありました。
antoniolupi ― 水回りをアートのように見せるブランド
この日の最後に見学したのが、antoniolupi(アントニオルピ)のショールームです。

antoniolupi は、イタリア・トスカーナを拠点とする、バスルームや水回り家具のデザインブランドです。
創業者のAntonio Lupi は、1950年代にガラスやクリスタルを使った家具・浴室まわりの製作を始め、その後、洗面、浴室、収納、鏡など、水回り空間全体を提案するブランドへと発展していきました。



ミラノのショールームはブレラ・デザイン地区にあり、建築家やインテリアデザイナーにとっても重要な場所として紹介されています。
水回りというと、どうしても機能性が先に思い浮かびますが、antoniolupi の展示はそれだけではありませんでした。





個人的には、この antoniolupi はかなり気に入ったブランドのひとつです。
水回りの家具なのに、どこか彫刻的で、素材の見せ方もとても美しい。
単に清潔で機能的な洗面空間というより、暮らしの中にある特別な場所として水回りを捉えているように感じました。




塗装職人の目線で見ると、水回りの家具は非常に難しい分野だと思います。
湿気、水はね、汚れ、日々の清掃に耐えながら、美しさも保たなければなりません。
素材選びや表面の仕上げ、防水性、艶、手触り。
そうした要素がすべて関わってきます。

antoniolupi のショールームでは、水回りの家具がここまで自由で美しく表現できるのかと驚かされました。
今回の最終日の視察の中でも、とても印象に残るショールームでした。
5回にわたる視察レポートを終えて
antoniolupi のショールームを見学し終えたころには夕方に。

体調不良のせいもあり、体力は限界を迎えていましたが、頑張って地下鉄を乗り継ぎ、どうにかこうにかホテルへ戻ることができました。
朝は突然の腹痛に見舞われ、一時はどうなることかと思いましたが、午後からなんとか街へ出ることができ、最後までミラノのデザインに触れることができて良かったです。
こうして振り返ると、今回のミラノサローネ視察ツアーは、私にとって本当に大きな経験となりました。

世界最大級の家具見本市である Fiera Milano Rho の圧倒的な規模。
世界中の家具ブランドがそれぞれの世界観を表現したブース。

そして、歴史ある建物や街中のショールームを舞台に繰り広げられた Fuori Salone 。
家具、キッチン、照明、金物、ガラス、石、金属、ファブリック、そして塗装。
さまざまな素材や技術が組み合わされ、単なる製品としてではなく、ひとつの空間や暮らしの提案として表現されていました。
塗装職人の目線で見ると、色や艶だけでなく、素材同士のつながり方、面の美しさ、角や見切りの納まり、光の受け方、空間の中での見え方など、学ぶことばかりでした。
派手に主張する仕上げだけが良いのではなく、素材の魅力を引き出し、空間全体を静かに支える仕上げの大切さも、あらためて感じました。

また、展示会だけでなく、ミラノの街並みや歴史的建築、食文化、人々の暮らしに触れられたことも、忘れられない経験です。
古い建物を大切に使いながら、その中に現代的なデザインを取り入れている姿には、ものを長く使い、手を加えながら受け継いでいく文化を感じました。
今回見て、触れて、感じたことを、すぐにすべて仕事へ反映できるわけではありません。
それでも、日々の家具塗装やものづくりの中で、色や仕上げを考える時、空間との調和を考える時に、ミラノで見た風景や家具が思い浮かぶことがあると思います。
そして、今回、世界のデザインを直接見るという貴重な機会を与えてくださった会社の皆さまに、心より感謝申し上げます。
渡航費をはじめ、さまざまな面でご支援いただき、快く送り出していただいたからこそ、この経験を得ることができました。今回学んだことを、これからの仕事や情報発信を通して少しずつ還元していきたいと思います。
また、この視察ツアーを企画・運営してくださったハーフェレジャパンの皆さまにも、大変お世話になりました。
慣れない海外で安心して行動できたのは、スタッフの皆さまのきめ細かなご準備とサポートがあったからこそです。
ツアーでご一緒した皆さまにも、心より感謝しています。
移動中や食事の時間、展示会場や街歩きの中で交わした会話も、今回の旅をより楽しく、実りあるものにしてくれました。業種や立場の異なる方々の視点を伺えたことも、大きな刺激になりました。
そして、全5部にわたる長い視察レポートを、最後まで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました。
当初は3部作くらいの予定でしたが、現地で見たもの、感じたこと、皆さまにお伝えしたいことがあまりにも多く、気がつけば全5部の長編となってしまいました。
長い連載にお付き合いいただき、心より感謝申し上げます。
このブログを通して、ミラノサローネや Fuori Salone の熱気、世界の家具づくりの魅力、そして初めてヨーロッパを訪れた私の驚きや感動を、少しでも感じていただけたなら嬉しく思います。
翌朝はいよいよ日本への帰路につきます。
たくさんの刺激と学び、そして思い出を胸に、8日間のミラノサローネ視察旅行は幕を閉じました。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
・
・
それでは、次回もお楽しみに
●ニシザキ工芸株式会社塗装部HP
https://tosou.nishizaki.co.jp/
●特注家具・ニシザキ工芸株式会社HP
https://www.nishizaki.co.jp/
塗装職人が巡る ミラノサローネ2026視察レポート第5部
最終回・自由視察最終日、まさかの腹痛から始まる一日

~前回、塗装職人が巡る、ミラノサローネ2026視察レポート4 街中編からの続き~
これまで4回にわたってお届けしてきた、ミラノサローネ2026視察レポート。
いよいよ今回が最終回となります。
前回の第4部では、4月25日の自由視察として、Duomo周辺の街歩き、安多化粧合板さんの展示、HENRY TIMI、Duomo大聖堂、DAIKANさん、Snaidero、RH など、ミラノ市内を一日かけて歩き回った様子をレポートしました。
今回の第5部では、ミラノ滞在最終日となる4月26日の自由視察の様子をお届けします。
・・・と、いつものように元気よく書き出したいところなのですが、この日は朝から、まさかのトラブルが発生しました。
朝から突然の腹痛に見舞われる
4月26日の朝。
目が覚めると、強烈な腹痛に襲われていました。

最初は「少しお腹の調子が悪いのかな」くらいに思ったのですが、すぐにそんな軽いものではないと分かりました。
起き上がろうとしても、思うように体が動かない。
冷や汗が出て、ベッドから出ることすらままならない状態です。
私は普段、胃腸の丈夫さにはわりと自信がある方です。
日本にいる時も、めったに腹痛など起こさないタイプなので、突然の強い腹痛には本当に驚きました。
しかも、ここは日本ではなく、イタリア・ミラノ。
言葉も病院の仕組みもよく分からない海外で、体調を崩すというのは、想像以上に不安なものです。
この日は完全単独行動の予定でした
これまでのミラノ滞在中は、ツアーで知り合った方々と一緒に行動することが多くありました。
本会場の視察も、街中のFuori Salone巡りも、いろいろな方と一緒に歩きながら、情報を交換したり、感想を話したりする時間がとても楽しいものでした。
しかし、この4月26日だけは、完全に単独行動をするつもりでいました。
前日まで一緒に行動していた方々にも、「明日は一人で自由に回ってみます」と伝えてありました。
一人でミラノの街を歩き、気になる展示やショールームを自分のペースで見て回る。
そうゆう時間も、この視察旅行の最後にぜひ経験してみたいと思っていたのです。
ところが、その朝に限ってこの腹痛。
よりによって、最後の自由視察の日にこんなことになるとは思ってもいませんでした。
頭をよぎる最悪のシナリオ
冷や汗をかきながらベッドで横になっていると、いろいろな不安が頭の中をぐるぐる巡り始めました。

「このまま動けずに、今日一日をムダにしてしまうのだろうか」
「明日は帰国日で、早朝からマルペンサ空港に向かわなければいけないのに、それまでに体調は回復してくれるのだろうか」
「もしこのまま悪化して、イタリアで入院なんてことになったらどうしよう」
考えれば考えるほど、不安ばかりが大きくなっていきます。
今回のミラノサローネ視察旅行は、会社に貴重な機会をいただいて参加させていただいたものです。
渡航費をはじめ、さまざまな面で工面していただき、送り出していただきました。
それなのに、最終日に体調を崩して動けないとなると、本当に申し訳ない気持ちになります。
せっかくここまで来たのに、最後の日を何も見られずに終えるのかと思うと、悔しさも込み上げてきました。
とはいえ、体が思うように動かない以上、どうすることもできません。
連絡するべきか、少し様子を見るべきか
このまま動けないようなら、ホテルの方や、今回の旅行を企画してくださったハーフェレージャパンのスタッフさんに連絡するべきかもしれない。
そう思いました。
ただ一方で、あまり大騒ぎにもしたくないという気持ちもありました。
少し休めば回復するのか、それともすぐに助けを求めた方がよいのか。
海外で体調を崩すと、その判断もなかなか難しいものです。
そんな中で、ふと思い出したのが、日本から持ってきていた胃腸薬と痛み止めでした。
「そういえば、念のために薬を持ってきていたはずだ」
スーツケースの中を確認し、持参していた薬を取り出しました。
とにかく今できることをしようと思い、胃腸薬と痛み止めを服用し、そのままベッドでじっと横になりました。
昼前には、どうにか動ける状態に
薬を飲んでしばらく横になっていると、少しずつ痛みが落ち着いてきました。
もちろん、すぐに完全回復というわけではありません。
体にはまだだるさが残っていましたし、朝の腹痛の恐怖もあり、無理はできない状態です。
それでも、運良く昼前にはどうにか起き上がれるくらいまで回復してきました。
あれほど動けなかった朝の状態を思うと、少し動けるようになっただけでも本当にありがたく感じました。
寝汗で体はびっしょり。
まずはシャワーを浴び、汗を流し、着替えて気持ちを整えました。

鏡を見ると、まだ少し疲れた顔をしていましたが、じっとホテルにいるよりは、無理のない範囲で外に出てみようという気持ちになってきました。
午後から、最後の Fuori Salone へ
本来であれば、朝から出発して一日かけて回る予定だった最終日の自由視察。
しかし、午前中は完全に体調回復にあてることになりました。
予定通りにはいきませんでしたが、それでも午後から少しでも見に行けるなら、行ってみよう。
そう思い、荷物を整えてホテルを出ました。

ミラノ滞在最後の一日。
しかも翌日は早朝からマルペンサ空港へ向かい、日本へ帰国する予定です。
残された時間は限られています。
体調に不安はありましたが、それでも「このまま何も見ずに終わりたくない」という気持ちが勝りました。
こうして、まさかの腹痛から始まったミラノ滞在最終日は、午後からようやく再スタートすることになりました。
ここからは、最後の Fuori Salone 見学へ。
体調と相談しながら、ミラノの街にもう一度出掛けていきました。
最寄り駅から、再び Duomo 駅へ
そして、最寄り駅の Porto di Mare(ポート・ディ・マーレ)駅へ向かいました。

この日は、前日まで一緒に行動していた皆さんとは別れて、完全に一人での自由視察です。
体調にはまだ少し不安がありましたが、無理をしない範囲で、最後のミラノの街を見て回ることにしました。

地下鉄に乗り、昨日と同じく Duomo(ドゥオーモ)駅へ。
ミラノ滞在5日目、こちらの駅も移動の際は毎回利用して、最初に来た時よりも少しだけ慣れてきた気がしました。


Duomo 駅を降りた私は、まず Brera(ブレラ)地区 を目指すことにしました。
ブレラ地区には多くの家具ショールームやギャラリーが点在していて、ミラノデザインウィーク期間中は街全体がデザインイベント会場のようになります。
これまでの街歩きでも比較的歩き慣れていたエリアだったので、体調が万全ではないこの日には、ちょうどよい目的地でした。
Duomo から Brera へ、ミラノの街並みを味わいながら
Duomo 駅を降りて Brera 地区へ向かう道のりも、ただの移動時間ではありませんでした。
ドゥオーモ大聖堂周辺の華やかな雰囲気から少しずつ離れていくと、石造りの建物が並ぶ通りや、歴史を感じるファサード、細い路地、ショーウィンドウの美しいお店など、ミラノらしい街並みが次々と現れてきます。


日本の街歩きとは違い、建物ひとつひとつに長い時間を重ねてきたような重みがあり、何気ない通りの風景にも絵になる美しさがあります。
壁の色、窓枠の形、バルコニーの装飾、路面の石畳。
そうした細かな部分を見ているだけでも、ミラノという街そのものが大きなデザイン展示のように感じられました。

この日は朝から体調を崩していたこともあり、無理をせずゆっくり歩きましたが、その分、普段なら見過ごしてしまいそうな街の表情をじっくり味わうことができたように思います。
Brera 地区へ向かう道中から、すでに Fuori Salone の楽しさは始まっていました。
ブレラ地区とはどんな場所か

ブレラ地区は、ミラノ中心部にある歴史と芸術、デザインが混じり合ったエリアです。
石畳の細い道、古い建物、ギャラリー、ブティック、カフェ、家具ショールームなどが並び、ミラノの中でも特に感度の高い雰囲気を感じる場所でした。

日本の街に例えるなら、青山・表参道のようなデザイン性の高さに、代官山や神楽坂のような落ち着いた路地の雰囲気が少し混ざったような印象でしょうか。

ショールームを目指して歩いている途中にも気になる建物や看板、ウィンドウディスプレイが次々と目に入り、なかなかまっすぐ目的地にたどり着けません。
この“寄り道したくなる感じ”こそ、Fuori Salone の楽しさなのかもしれません。
Boffi/DePadova ― 歴史ある建築と現代デザインが響き合う空間
最初に訪れたのは、Boffi/DePadova(ボッフィ/デパドヴァ)のショールームです。

Boffi は、イタリアを代表する高級キッチン・バスルームブランドのひとつです。
1934年にイタリア北部で始まり、キッチン、バスルーム、収納システムなどを中心に、建築と家具の境界をまたぐような上質な住空間を提案してきたブランドです。

一方の DePadova は、1950年代に Fernando De Padova と Maddalena De Padova によって始まったブランドで、北欧家具やアメリアのモダンデザインをイタリアに紹介し、その後はイタリアらしい洗練された家具ブランドとして発展してきました。

現在は、Boffi、DePadova、ADL などが一体となり、キッチン、バスルーム、収納、家具、間仕切りなどを含めた、住空間全体を提案するブランドグループとなっています。

実際に中へ入ってみると、まず目を引かれたのは、展示されている家具だけでなく、歴史を感じさせる建物そのものの美しさでした。古いミラノの建築が持つ重厚な雰囲気の中に、現代的なキッチンや家具が静かに溶け込み、建築とインテリアがお互いに魅力を引き立て合っていました。


キッチンは非常にミニマルで、面材や天板、収納の納まりが美しく、余計なものがほとんど見えません。バスルームの展示も、単なる設備としてではなく、家具や建築の一部として構成されており、素材の使い方、照明、壁面の仕上げまで、すべてが緻密に計算されているように感じました。


今回巡った数多くのショールームの中でも、Boffi/DePadova は個人的に心を動かされた場所のひとつです。
一つひとつの家具が美しいだけでなく、それらをどのような空間に置き、どんな光の中で見せるのかまで含めて、ブランドの世界観が完成していました。


派手な装飾で目を引くのではなく、素材の質感や納まりの美しさ、空間に流れる静かな緊張感によって上質さを感じさせる。
その完成度の高さには深く感銘を受け、時間が許すなら、もっと長くその場に留まって見ていたいと思うほどでした。


塗装職人の目線で見ても、木、石、金属、ガラス、塗装面の艶や質感が見事に調和していました。
仕上げが全面に出て主張するのではなく、空間全体の美しさを静かに支えている。その姿に、上質なものづくりの一つの理想を見たような気がしました。

後ろ髪を引かれる思いですが・・・時間もないので次にいってみましょう。
TIME & STYLE ― ミラノで出会った、日本のものづくり
次に訪れたのは、TIME & STYLE(タイムアンドスタイル)のショールームです。


TIME & STYLE は、東京を拠点とする日本の家具ブランドです。家具、照明、テーブルウェア、漆器など、暮らしに関わる道具をデザイン・製作しており、伝統的な日本の技術を現代の暮らしに合わせて発展させることを大切にしているブランドです。

ブレラ地区にあるミラノのショールームは、1800年代に建てられた美しい新古典主義の建物の中にあり、同じ建物内に複数のショールームが展開されています。TIME & STYLEさんのショールームは、隣接する2箇所の空間を回ることができました。

中に入って、まずホッとしたのは、日本語で普通に会話できたことです。
体調不良からの単独行動で少し心細さもあったので、遠いミラノの街中で日本語が通じるというだけで、かなり安心しました。


展示されている家具は、イタリアの家具とはまた違う、静かで落ち着いた佇まいがありました。
和を意識したデザイン、控えめな線、木の表情を活かした仕上げ。

昔ながらの日本の木工技術を思わせる家具も多く、どこか懐かしさを感じさせる空間でした。

↑畳ベッド?が居心地良さそうでした。


特に木部の仕上げには、日本の家具らしい繊細さを感じました。
大きく主張するのではなく、素材の手触りや細部の納まりで良さを伝える。
そうした姿勢は、普段の木工塗装の仕事にも通じるものがあります。



ミラノという世界的なデザイン都市で、日本のブランドがしっかりとショールームを構え、海外の方々に向けて日本のものづくりを発信している。
その光景を見て、同じ日本で家具に関わる者として、とても誇らしい気持ちになりました。
ジェラートで少し元気を取り戻す
ショールームをいくつか回っているうちに、少し疲れも出てきました。
この日は朝から腹痛で体力を消耗していたこともあり、無理は禁物です。
そんな時、通り沿いに賑わっているジェラート屋さんを見つけました。
店名は分からなかったのですが、人気のお店のようで、店の前には多くの人が集まっていました。

せっかくなので私もジェラートを購入し、路上で食べることに。
やはり本場イタリアのジェラートは美味しいです。
冷たくて甘いジェラートを食べていると、朝の体調不良で沈んでいた気持ちも少しずつ回復してきました。
街角で見つけた、高島屋さんと龍村美術織物さんの展示

ブレラ地区を歩いていると、街角で見覚えのある名前を見つけました。
日本の百貨店 高島屋 さんの出展です。


高島屋さんと龍村美術織物さんは、ミラノデザインウィーク2026の Fuori Salone に共同出展し、「CASA TATSUMURA(カーサ タツムラ)」というインテリアコレクションを発表していました。


展示では、日本の美術織物が、家具やインテリアとして新しい形で見せられていました。
織物というと、どうしても和装や茶道具などのイメージが強いかもしれませんが、実際に空間の中で見ると、壁面や家具、ファブリックとしても非常に存在感があります。


木工塗装の仕事でも、木目や色、艶、手触りといった表面の表情を大切にします。
龍村美術織物さんの展示では、織物ならではの色の深み、糸の立体感、光の受け方が印象的でした。
素材は違っても、表面の美しさが空間全体の印象を大きく左右するという点では、塗装にも通じるものを感じました。
ミラノの街角で、日本の伝統的かつ卓越した技の織物が現代のインテリアとして発信されている。
これもまた、とても誇らしい光景でした。
ミラノで見つけたラーメン屋「KYOTO RAMEN 匠」


海外で日本語の看板やラーメンの文字を見ると、それだけでつい足を止めてしまいます。
メニューを見るとラーメン一杯が 15ユーロ ほど。日本円にすると約2,800円くらいです。

各種ラーメンとご飯物が、おそらくオール15ユーロって感じですかね!?
日本の感覚からすると、ラーメン一杯としてはかなり高級です。
それでも地元の人たちでお店は賑わっていましたから、現地の物価感覚すると大衆的なお値段なのかもしれませんね。

店頭には、こんなラーメンのイラストも掲げられていました。
丼の中にはチャーシューや煮卵、海苔に加えて、なぜかかわいい海老の天ぷら2本も(笑)
招き猫、日本語っぽい適当な模様が描いてある提灯、いかにも“日本らしさ全部入り”といった感じ。
見るからに AI に描いてもらった感のある!?、楽しいイラストでした。
この日は体調のこともあり、実際に食べることはしませんでしたが、ミラノの街中で日本のラーメン文化がしっかり受け入れられている様子を見ることができたのは面白かったです。
Valcucine ― サステナブルなキッチンデザイン
次に訪れたのは、Valcucine(ヴァルクッチーネ)のショールームです。


Valcucine は、1980年にイタリアで創業したキッチンブランドです。
デザイン性の高さだけでなく、サステナビリティや環境配慮をブランドの大きな軸にしているのが特徴です。
公式情報でも、40年以上にわたり、ウェルビーイング、革新性、時代を越えるデザインを大切にしながら、サステナブルなキッチンづくりに取り組んできたブランドとして紹介されています。
実際に展示されていたキッチンで印象的だったのは、収納を開いた時に現れる大きな開口部です。


普段は薄くフラットな扉によって、調理器具や棚、シンクまわりをすっきりと隠しておくことができます。ところが扉を大きく開くと、内部全体が一気に見渡せる作業空間へと変わります。仕舞ったものが一目で分かり、調理中の動作を妨げない、非常に開放的なつくりだと感じました。




機能がたくさん詰め込まれているにもかかわらず、扉を閉じた時には凸凹や取っ手がほとんど見えず、ひとつの大きな面のように見えるのも特徴的です。
キッチンというより、壁面に置かれたミニマルな家具や、ひとつの建築のような佇まいがありました。


また黒や白、木材、金属、ガラス、石といった素材を使いながら、全体を極力シンプルにまとめているため、どの展示も非常にアート性が高く感じられました。



鮮やかな色の天板、幾何学模様を取り入れた面材なども、単なるキッチン設備を超えて、空間そのものを演出する作品のようでした。



塗装職人の目線で見ると、これだけ面を大きく、装飾を少なく見せるデザインは、仕上げの精度がそのまま品質として表れます。
扉同士の隙間、面の平滑さ、艶の揃い方、異なる素材との境目など、ごまかしきれない細部がとても美しく納められていました。
必要な機能はしっかりと備えながら、使わない時には静かに姿を消す。
Valcucine の展示からは、機能性とミニマムな美しさを両立させる、イタリアらしい洗練されたキッチンデザインを感じました。
イタリアのトイレ事情と、人の優しさ
この日の自由視察で、個人的にかなり切実だったのがトイレ事情です。
朝から腹痛に見舞われたこともあり、この日はとにかくトイレが近くて大変でした。
日本にいると、駅、コンビニ、商業施設、公園など、比較的どこでも気軽にトイレを見つけることができます。
しかしイタリアでは、日本と同じ感覚ではいきません。

公衆トイレの数はそれほど多くなく、地下鉄の駅にもトイレがないことがあります。
あったとしても有料だったり、場所が分かりにくかったりします。
体調が万全でない時には、これがなかなかの不安材料でした。
ちなみに、イタリア語でトイレは Bagno(バーニョ)と言います。
「トイレはどこですが?」は、Dov'e il bagno?(ドヴェ イル バーニョ?)と聞くそうです。
この日は、まさにこの言葉を覚えておいてよかったと感じる場面が何度もありました。

有り難かったのは、ショールームや街のカフェでお願いすると、意外にも快くトイレを使わせてもらえたことです。
もちろんお店や状況にもよると思いますが、困っているこちらの様子を察してくれたのか、とても親切に対応してくださる方が多く、本当に助かりました。
体調不良という意味では大変な一日でしたが、そのおかげでイタリアの方々の優しさに触れることができたのも、忘れられない思い出になりました。
FLEXFORM ― 控えめな上質さを感じる家具
次に見学したのは、FLEXFORM(フレックスフォルム)です。

FLEXFORM は、1959年にイタリア北部のブリアンツァ家具産地で、Galimberti 兄弟によって始まった家具ブランドです。
現在も家族経営の背景を持ち、ソファやアームチェアを中心に、上質で落ち着いたリビング空間を提案しています。


FLEXFORM の家具は、強く主張するというより、控えめでありながら確かな上質さがある印象でした。
大きなソファも、ただ豪華に見せるのではなく、座り心地やプロポーション、張地の質感で品の良さを感じさせます。




公式サイトにも、FLEXFORM はソファを中核としながら、リビング、ダイニング、ベッドルームまで幅広い家具を展開するブランドとして紹介されています。
「派手なラグジュアリー」ではなく、「さりげない高級感」という言葉が似合うブランドだと思いました。


塗装職人として見ても、こうした落ち着いた空間では、木部や金属、張地、塗装面がそれぞれ出過ぎず、全体の空気を整えることが大切だと感じます。
色や艶で目立たせるのではなく、触れた時、座った時、空間に身を置いた時にじわじわと良さが伝わる。
FLEXFORM の展示には、そんな大人の上質さがありました。
antoniolupi ― 水回りをアートのように見せるブランド
この日の最後に見学したのが、antoniolupi(アントニオルピ)のショールームです。

antoniolupi は、イタリア・トスカーナを拠点とする、バスルームや水回り家具のデザインブランドです。
創業者のAntonio Lupi は、1950年代にガラスやクリスタルを使った家具・浴室まわりの製作を始め、その後、洗面、浴室、収納、鏡など、水回り空間全体を提案するブランドへと発展していきました。



ミラノのショールームはブレラ・デザイン地区にあり、建築家やインテリアデザイナーにとっても重要な場所として紹介されています。
水回りというと、どうしても機能性が先に思い浮かびますが、antoniolupi の展示はそれだけではありませんでした。





個人的には、この antoniolupi はかなり気に入ったブランドのひとつです。
水回りの家具なのに、どこか彫刻的で、素材の見せ方もとても美しい。
単に清潔で機能的な洗面空間というより、暮らしの中にある特別な場所として水回りを捉えているように感じました。




塗装職人の目線で見ると、水回りの家具は非常に難しい分野だと思います。
湿気、水はね、汚れ、日々の清掃に耐えながら、美しさも保たなければなりません。
素材選びや表面の仕上げ、防水性、艶、手触り。
そうした要素がすべて関わってきます。

antoniolupi のショールームでは、水回りの家具がここまで自由で美しく表現できるのかと驚かされました。
今回の最終日の視察の中でも、とても印象に残るショールームでした。
5回にわたる視察レポートを終えて
antoniolupi のショールームを見学し終えたころには夕方に。

体調不良のせいもあり、体力は限界を迎えていましたが、頑張って地下鉄を乗り継ぎ、どうにかこうにかホテルへ戻ることができました。
朝は突然の腹痛に見舞われ、一時はどうなることかと思いましたが、午後からなんとか街へ出ることができ、最後までミラノのデザインに触れることができて良かったです。
こうして振り返ると、今回のミラノサローネ視察ツアーは、私にとって本当に大きな経験となりました。

世界最大級の家具見本市である Fiera Milano Rho の圧倒的な規模。
世界中の家具ブランドがそれぞれの世界観を表現したブース。

そして、歴史ある建物や街中のショールームを舞台に繰り広げられた Fuori Salone 。
家具、キッチン、照明、金物、ガラス、石、金属、ファブリック、そして塗装。
さまざまな素材や技術が組み合わされ、単なる製品としてではなく、ひとつの空間や暮らしの提案として表現されていました。
塗装職人の目線で見ると、色や艶だけでなく、素材同士のつながり方、面の美しさ、角や見切りの納まり、光の受け方、空間の中での見え方など、学ぶことばかりでした。
派手に主張する仕上げだけが良いのではなく、素材の魅力を引き出し、空間全体を静かに支える仕上げの大切さも、あらためて感じました。

また、展示会だけでなく、ミラノの街並みや歴史的建築、食文化、人々の暮らしに触れられたことも、忘れられない経験です。
古い建物を大切に使いながら、その中に現代的なデザインを取り入れている姿には、ものを長く使い、手を加えながら受け継いでいく文化を感じました。
今回見て、触れて、感じたことを、すぐにすべて仕事へ反映できるわけではありません。
それでも、日々の家具塗装やものづくりの中で、色や仕上げを考える時、空間との調和を考える時に、ミラノで見た風景や家具が思い浮かぶことがあると思います。
そして、今回、世界のデザインを直接見るという貴重な機会を与えてくださった会社の皆さまに、心より感謝申し上げます。
渡航費をはじめ、さまざまな面でご支援いただき、快く送り出していただいたからこそ、この経験を得ることができました。今回学んだことを、これからの仕事や情報発信を通して少しずつ還元していきたいと思います。
また、この視察ツアーを企画・運営してくださったハーフェレジャパンの皆さまにも、大変お世話になりました。
慣れない海外で安心して行動できたのは、スタッフの皆さまのきめ細かなご準備とサポートがあったからこそです。
ツアーでご一緒した皆さまにも、心より感謝しています。
移動中や食事の時間、展示会場や街歩きの中で交わした会話も、今回の旅をより楽しく、実りあるものにしてくれました。業種や立場の異なる方々の視点を伺えたことも、大きな刺激になりました。
そして、全5部にわたる長い視察レポートを、最後まで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました。
当初は3部作くらいの予定でしたが、現地で見たもの、感じたこと、皆さまにお伝えしたいことがあまりにも多く、気がつけば全5部の長編となってしまいました。
長い連載にお付き合いいただき、心より感謝申し上げます。
このブログを通して、ミラノサローネや Fuori Salone の熱気、世界の家具づくりの魅力、そして初めてヨーロッパを訪れた私の驚きや感動を、少しでも感じていただけたなら嬉しく思います。
翌朝はいよいよ日本への帰路につきます。
たくさんの刺激と学び、そして思い出を胸に、8日間のミラノサローネ視察旅行は幕を閉じました。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
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それでは、次回もお楽しみに
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