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家具の「見えない品質」から世界のデザイン最前線まで!
2026ミラノサローネ報告会レポート

先日のブログでもご案内しました、東京都家具工業組合主催の「2026ミラノサローネ報告会」が、2026年6月5日(金)、東京都江東区青海にある東京都立産業技術研究センター、通称「都産技研」にて開催されました。
今回の報告会には、弊社ニシザキ工芸からも営業部・塗装部のスタッフが多数参加。

世界の家具・インテリアデザインの最新動向だけでなく、家具の強度や耐久性、表面の摩擦や摩耗といった、ものづくりの品質を支える技術についても学ぶ、大変充実した一日となりました。
今回は、その様子をご紹介いたします。
まずは、家具関連の検査試験施設を見学

当日は、午後2時から東京都立産業技術研究センターの検査試験施設を見学しました。
都産技研は、製品開発や品質向上に取り組む企業を、さまざまな試験・分析・技術相談によって支援している研究機関です。

普段、私たちが製作や塗装に携わっている家具も、見た目の美しさだけでなく、安全性や耐久性、長く使用した際の変化など、さまざまな視点から品質を確認する必要があります。


施設内では、家具や椅子の強度・耐久性を調べる試験設備をはじめ、素材や表面の性質を評価する機器について説明していただきました。
家具は、日常的に人の体重や物の重さを受け続けます。

一度だけ大きな力に耐えられれば良いというものではなく、座る、立ち上がる、扉や引き出しを開閉するといった動作を長期間繰り返した際にも、安全に使用できることが求められます。

そうした実際の使用状況を想定し、一定の力を繰り返し加えながら、変形や破損が起こらないか客観的な数値によって確かめていきます。
職人の経験や感覚はもちろん大切ですが、その品質を試験によって「見える化」することの重要性を改めて感じました。
家具にも深く関わる「トライボロジー」
今回の施設見学では、「トライボロジー」という言葉も登場しました。
トライボロジーとは、物と物とが接触して動く際に生じる「摩擦・摩耗・潤滑」などを研究する分野です。
少し難しそうに聞こえますが、家具にも深く関係しています。

例えば、引き出しの滑り具合、扉や金物の動き、椅子を床の上で動かした際の摩擦、使用を重ねることで生じる表面の擦れや艶の変化、そしてファブリックや革製品の触り心地などもトライボロジーに関わる現象です。
塗装においても、塗膜の硬さや滑りやすさ、傷の付きにくさ、繰り返し擦られた際の摩耗などは、家具の使い心地や耐久性を左右します。

私たち塗装職人は、色や艶、手触りといった感覚的な部分を大切にしながら仕事をしています。
しかし、その美しさや触感の裏側には、塗膜の性能や素材との相性、使用環境など、科学的に捉えられる要素も数多くあります。
「美しく仕上げること」と「長く安心して使えること」。
その両方を成立させることが、家具塗装に求められる大切な役割なのだと再確認する施設見学となりました。
和田浩一さんによる「2026ミラノサローネ報告会」
施設見学の後、午後3時からは、都産技研内の東京イノベーションハブに会場を移し、インテリアデザイナー・和田浩一さんによる「2026ミラノサローネ報告会」が行われました。

和田さんは、STUDIO KAZの代表として、家具やキッチン、住宅、店舗など、幅広い分野のデザインを手掛けていらっしゃいます。
今回の報告会は、単に「今年はこの色が流行している」「この形が新しい」といった表面的なトレンドを紹介するものではありません。
家具の素材や仕上げ、金物、納まり、ディティールなど、実際の設計・製造・施工や販売・塗装に携わる人に向けた視点から、2026年のミラノサローネが読み解かれていきました。
デザインを形づくる「ナラティブ」
今回の講演で大きなキーワードとなったのが、「ナラティブ」です。
「ナラティブ」と「ストーリー」は、どちらも「物語」と訳されますが、その意味合いは少し異なります。
ストーリーとは、主人公や登場人物を中心に展開する、一定の筋書きを持った物語のこと。
始まりと終わりがあり、ひとつの作品として完結しているイメージです。
一方ナラティブは、語り手である私たち一人ひとりが主人公となり、自らの経験や感情、価値観を通して紡いでいく物語です。その内容は、出会いや体験によって変化し続け、明確な終わりもありません。
つまり2つの言葉の違いは、「主人公は誰か」「完結しているか」という点にあります。
家具や空間に置き換えると、ストーリーは作り手が「どのような思いで、この家具をつくったのか」という完成された物語です。
一方のナラティブは、その家具を使う人が、家族と食卓を囲んだり、傷や色の変化に思い出を重ねたりしながら、暮らしの中で新しく紡いでいく物語です。

家具や空間のデザインも、単に形が美しいだけで成立しているのではありません。
なぜこの素材を使用するのか。
なぜこの形や色、仕上げを選ぶのか。
どのような暮らし方を提案し、使う人にどのような感覚をもたらしたいのか。
そこには、つくり手やブランドが込めた考え方があります。そして、その考え方を一方的に伝えるだけでなく、使う人が自らの暮らしや経験を重ねられる余白があることで、家具や空間は、その人自身の物語の一部になっていきます。
2026年のミラノサローネでは、製品を単体で見せるだけでなく、光、音、素材、色、香り、展示空間などを組み合わせ、来場者自身がブランドの世界観に入り込み、体験できるような展示が、より重要になっていることが感じられました。
素材と仕上げそのものがデザインを語る
素材や仕上げについても、単なる表面装飾ではなく、デザインの考え方を伝える重要な要素になっています。

石、木、金属、ガラス、布、樹脂など、それぞれの素材が持つ表情を生かしながら、異なる質感を組み合わせた提案が数多く見られました。
一方で、手仕事の跡や素材の揺らぎ、不均一さといった、工業製品だけでは生み出しにくい表情にも改めて注目が集まっています。
均一で完璧な仕上がりだけが美しいのではなく、素材の個性や人の手の温もりを、どのように現代の空間に取り入れるか。
伝統的な技術と最新の素材・加工技術を組み合わせることが、これからの家具づくりにおける一つの可能性なのだと感じました。
キッチンは「設備」から暮らしの中心へ
2026年は、キッチン分野の国際見本市「EuroCucina」と、キッチン設備の技術展「FTK」が同時開催された年でもあります。
近年のキッチンは、調理をするためだけの閉じた設備ではなく、リビングやダイニングと緩やかにつながる、暮らしの中心として考えられるようになっています。
収納や家電などの機能を目立たせず、家具の中へ自然に組み込む。
キッチンとリビングの素材や色調をそろえ、空間全体を一つのインテリアとして構成する。
必要な機能を備えながら、生活感を過度に見せない工夫が、さまざまな形で提案されていました。
技術そのものを全面に押し出すのではなく、使う人が意識しないところで快適性を高める「見えない技術」も、これからますます重要になりそうです。
営業と製造、それぞれの立場から得た学び
今回、弊社からは営業部と塗装部のスタッフがそろって参加しました。
営業スタッフにとっては、家具の色や形だけでなく、その背景にある素材の特徴や製造技術、デザインの意図をお客様へどのように伝えていくかを考える機会になりました。
塗装スタッフにとっては、塗装が単に色を付けたり表面を保護したりするだけではなく、家具の印象やブランドの世界観を形づくる、デザインの一部であることを改めて実感する機会となりました。
同じ木材、同じ色であっても、艶の度合い、表面の質感、木目の見せ方、エッジの納まり、光の反射によって、家具の印象は大きく変わります。
デザイナーが意図した物語や空間の雰囲気を汲み取り、それを実際の製品として形にしていく。
そこに、設計、営業、製造、塗装が連携することの大切さがあります。
目に見える美しさと、目に見えない品質
今回の施設見学とミラノサローネ報告会は、一見すると異なる内容のように思えます。
しかし、二つを続けて体験したことで、共通する一つのテーマが見えてきました。
それは、家具には「目に見える価値」と「目に見えない価値」の両方が必要だということです。
色、形、素材、艶、手触り、空間演出といった、目に見える美しさ。
強度、耐久性、摩擦や摩耗への配慮、製造工程、素材選定の理由といった、普段は目に見えにくい品質。
その両方がしっかりと結び付いてこそ、長く愛される家具が生まれるのだと思います。
世界のデザインの最前線と、ものづくりを支える科学的な評価技術。
その二つを一日で学ぶことができた、大変貴重な報告会となりました。
今回得た気付きや知識を、日々の仕事に活かしていきたいと思います。
最後になりましたが、報告会を企画・運営してくださった東京都家具工業組合、東京都立産業技術研究センター、東京都椅子張り技能士会、東京木工塗装技能士会の皆さま、そして貴重なお話しを聞かせてくださった和田浩一さんに、心より御礼申し上げます。
報告会の後は懇親会へ

報告会終了後には懇親会が開かれ、参加者の皆さんと食事を囲みながら、ミラノサローネの感想や日頃の仕事について語り合いました。業種や立場を越えて交流を深めることができ、最後まで有意義で楽しいひとときとなりました。
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それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
次回もお楽しみに
●ニシザキ工芸株式会社塗装部HP
https://tosou.nishizaki.co.jp/
●特注家具・ニシザキ工芸株式会社HP
https://www.nishizaki.co.jp/
家具の「見えない品質」から世界のデザイン最前線まで!
2026ミラノサローネ報告会レポート

先日のブログでもご案内しました、東京都家具工業組合主催の「2026ミラノサローネ報告会」が、2026年6月5日(金)、東京都江東区青海にある東京都立産業技術研究センター、通称「都産技研」にて開催されました。
今回の報告会には、弊社ニシザキ工芸からも営業部・塗装部のスタッフが多数参加。

世界の家具・インテリアデザインの最新動向だけでなく、家具の強度や耐久性、表面の摩擦や摩耗といった、ものづくりの品質を支える技術についても学ぶ、大変充実した一日となりました。
今回は、その様子をご紹介いたします。
まずは、家具関連の検査試験施設を見学

当日は、午後2時から東京都立産業技術研究センターの検査試験施設を見学しました。

都産技研は、製品開発や品質向上に取り組む企業を、さまざまな試験・分析・技術相談によって支援している研究機関です。

普段、私たちが製作や塗装に携わっている家具も、見た目の美しさだけでなく、安全性や耐久性、長く使用した際の変化など、さまざまな視点から品質を確認する必要があります。


施設内では、家具や椅子の強度・耐久性を調べる試験設備をはじめ、素材や表面の性質を評価する機器について説明していただきました。

家具は、日常的に人の体重や物の重さを受け続けます。

一度だけ大きな力に耐えられれば良いというものではなく、座る、立ち上がる、扉や引き出しを開閉するといった動作を長期間繰り返した際にも、安全に使用できることが求められます。

そうした実際の使用状況を想定し、一定の力を繰り返し加えながら、変形や破損が起こらないか客観的な数値によって確かめていきます。
職人の経験や感覚はもちろん大切ですが、その品質を試験によって「見える化」することの重要性を改めて感じました。
家具にも深く関わる「トライボロジー」
今回の施設見学では、「トライボロジー」という言葉も登場しました。

トライボロジーとは、物と物とが接触して動く際に生じる「摩擦・摩耗・潤滑」などを研究する分野です。
少し難しそうに聞こえますが、家具にも深く関係しています。

例えば、引き出しの滑り具合、扉や金物の動き、椅子を床の上で動かした際の摩擦、使用を重ねることで生じる表面の擦れや艶の変化、そしてファブリックや革製品の触り心地などもトライボロジーに関わる現象です。
塗装においても、塗膜の硬さや滑りやすさ、傷の付きにくさ、繰り返し擦られた際の摩耗などは、家具の使い心地や耐久性を左右します。

私たち塗装職人は、色や艶、手触りといった感覚的な部分を大切にしながら仕事をしています。
しかし、その美しさや触感の裏側には、塗膜の性能や素材との相性、使用環境など、科学的に捉えられる要素も数多くあります。
「美しく仕上げること」と「長く安心して使えること」。
その両方を成立させることが、家具塗装に求められる大切な役割なのだと再確認する施設見学となりました。
和田浩一さんによる「2026ミラノサローネ報告会」
施設見学の後、午後3時からは、都産技研内の東京イノベーションハブに会場を移し、インテリアデザイナー・和田浩一さんによる「2026ミラノサローネ報告会」が行われました。

和田さんは、STUDIO KAZの代表として、家具やキッチン、住宅、店舗など、幅広い分野のデザインを手掛けていらっしゃいます。
今回の報告会は、単に「今年はこの色が流行している」「この形が新しい」といった表面的なトレンドを紹介するものではありません。
家具の素材や仕上げ、金物、納まり、ディティールなど、実際の設計・製造・施工や販売・塗装に携わる人に向けた視点から、2026年のミラノサローネが読み解かれていきました。
デザインを形づくる「ナラティブ」
今回の講演で大きなキーワードとなったのが、「ナラティブ」です。
「ナラティブ」と「ストーリー」は、どちらも「物語」と訳されますが、その意味合いは少し異なります。
ストーリーとは、主人公や登場人物を中心に展開する、一定の筋書きを持った物語のこと。
始まりと終わりがあり、ひとつの作品として完結しているイメージです。
一方ナラティブは、語り手である私たち一人ひとりが主人公となり、自らの経験や感情、価値観を通して紡いでいく物語です。その内容は、出会いや体験によって変化し続け、明確な終わりもありません。
つまり2つの言葉の違いは、「主人公は誰か」「完結しているか」という点にあります。
家具や空間に置き換えると、ストーリーは作り手が「どのような思いで、この家具をつくったのか」という完成された物語です。
一方のナラティブは、その家具を使う人が、家族と食卓を囲んだり、傷や色の変化に思い出を重ねたりしながら、暮らしの中で新しく紡いでいく物語です。

家具や空間のデザインも、単に形が美しいだけで成立しているのではありません。
なぜこの素材を使用するのか。
なぜこの形や色、仕上げを選ぶのか。
どのような暮らし方を提案し、使う人にどのような感覚をもたらしたいのか。
そこには、つくり手やブランドが込めた考え方があります。そして、その考え方を一方的に伝えるだけでなく、使う人が自らの暮らしや経験を重ねられる余白があることで、家具や空間は、その人自身の物語の一部になっていきます。
2026年のミラノサローネでは、製品を単体で見せるだけでなく、光、音、素材、色、香り、展示空間などを組み合わせ、来場者自身がブランドの世界観に入り込み、体験できるような展示が、より重要になっていることが感じられました。
素材と仕上げそのものがデザインを語る
素材や仕上げについても、単なる表面装飾ではなく、デザインの考え方を伝える重要な要素になっています。

石、木、金属、ガラス、布、樹脂など、それぞれの素材が持つ表情を生かしながら、異なる質感を組み合わせた提案が数多く見られました。
一方で、手仕事の跡や素材の揺らぎ、不均一さといった、工業製品だけでは生み出しにくい表情にも改めて注目が集まっています。
均一で完璧な仕上がりだけが美しいのではなく、素材の個性や人の手の温もりを、どのように現代の空間に取り入れるか。
伝統的な技術と最新の素材・加工技術を組み合わせることが、これからの家具づくりにおける一つの可能性なのだと感じました。
キッチンは「設備」から暮らしの中心へ
2026年は、キッチン分野の国際見本市「EuroCucina」と、キッチン設備の技術展「FTK」が同時開催された年でもあります。

近年のキッチンは、調理をするためだけの閉じた設備ではなく、リビングやダイニングと緩やかにつながる、暮らしの中心として考えられるようになっています。
収納や家電などの機能を目立たせず、家具の中へ自然に組み込む。
キッチンとリビングの素材や色調をそろえ、空間全体を一つのインテリアとして構成する。
必要な機能を備えながら、生活感を過度に見せない工夫が、さまざまな形で提案されていました。
技術そのものを全面に押し出すのではなく、使う人が意識しないところで快適性を高める「見えない技術」も、これからますます重要になりそうです。
営業と製造、それぞれの立場から得た学び
今回、弊社からは営業部と塗装部のスタッフがそろって参加しました。
営業スタッフにとっては、家具の色や形だけでなく、その背景にある素材の特徴や製造技術、デザインの意図をお客様へどのように伝えていくかを考える機会になりました。
塗装スタッフにとっては、塗装が単に色を付けたり表面を保護したりするだけではなく、家具の印象やブランドの世界観を形づくる、デザインの一部であることを改めて実感する機会となりました。
同じ木材、同じ色であっても、艶の度合い、表面の質感、木目の見せ方、エッジの納まり、光の反射によって、家具の印象は大きく変わります。
デザイナーが意図した物語や空間の雰囲気を汲み取り、それを実際の製品として形にしていく。
そこに、設計、営業、製造、塗装が連携することの大切さがあります。
目に見える美しさと、目に見えない品質
今回の施設見学とミラノサローネ報告会は、一見すると異なる内容のように思えます。
しかし、二つを続けて体験したことで、共通する一つのテーマが見えてきました。

それは、家具には「目に見える価値」と「目に見えない価値」の両方が必要だということです。
色、形、素材、艶、手触り、空間演出といった、目に見える美しさ。
強度、耐久性、摩擦や摩耗への配慮、製造工程、素材選定の理由といった、普段は目に見えにくい品質。
その両方がしっかりと結び付いてこそ、長く愛される家具が生まれるのだと思います。
世界のデザインの最前線と、ものづくりを支える科学的な評価技術。
その二つを一日で学ぶことができた、大変貴重な報告会となりました。
今回得た気付きや知識を、日々の仕事に活かしていきたいと思います。
最後になりましたが、報告会を企画・運営してくださった東京都家具工業組合、東京都立産業技術研究センター、東京都椅子張り技能士会、東京木工塗装技能士会の皆さま、そして貴重なお話しを聞かせてくださった和田浩一さんに、心より御礼申し上げます。
報告会の後は懇親会へ

報告会終了後には懇親会が開かれ、参加者の皆さんと食事を囲みながら、ミラノサローネの感想や日頃の仕事について語り合いました。業種や立場を越えて交流を深めることができ、最後まで有意義で楽しいひとときとなりました。
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それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
次回もお楽しみに
●ニシザキ工芸株式会社塗装部HP
https://tosou.nishizaki.co.jp/
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